かがみは原作担当。かがみは原作担当。 【魔女っ娘サキーヌ ②】
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
トーク情報- かがみは原作担当。
かがみは原作担当。 【ZOO】
気分はハイ。システム、オールグリーン。相互インダクタンス、良好。
この動物園内に作られた通称【ZOO】と呼ばれるバトルフィールドの中央に立ち、ヘットギアを装着した。
「スタンバイ」
俺の声を認識すると、手に持ったスマートホンのアプリケーションが起動された。
「いくか!」
グラフィックシステムが発動し、眼前を覆うモニターにはグラフィックで加工された風景が広がる。
眼前に広がる大自然。横を流れる川の音や、どこかで鳴いている動物の雄叫びが、臨場感を演出している。
「今回は……サバンナか?」
足を踏み締め地面の硬さ確認。四肢の動作確認も含めて、辺りを見回してみる。近くを流れる川は濁流。太陽よりも少し右手には小高い丘。このバトルは、地形の把握が肝心だ。少しの油断が命取りになる。
そうこうしていると、俺の目の前に2メートルはあろうかと思われるほど巨大なゴリラが出現した。ゴリラの頭上には緑色の体力ゲージと、【もっちー】の表記。つい先週、戦ったユーザーだ。
動物学者が動物の生態を知るために作り出した体感型アプリケーションを某ゲーム会社がバトル用にシステム開発したこの【ZOO】は、同時刻にオンラインしているユーザーの中から無作為に選ばれたユーザー同士がバトルをするゲーム。
こんな短いスパンで再戦するのは、極めて珍しい。
向かい合う【もっちー】は、四肢の動作確認を終えると、真っ直ぐにこちらを見つめた。
相手からは、こちらは巨大なライオンに見えてるはずだ。
俺たちは向き合い微動だにしない。一種の独特な緊張感がこの場を占領している。
高まる鼓動に直接響く自らの呼吸。俺は今、このバーチャルな世界に生きている。
お互いの緊張がピークに達したその時、2人の中央に【GO!】の文字が現れた。
俺はすぐさま体制を低く構え、相手の出方を窺う。実際には存在しない尻尾の先まで、感覚を研ぎ澄ます。
先に動いたのは、もっちーだ。
もっちーは耳をつんざくほどの咆哮を上げると、勢いよく突進してきた。
よし。前回と同じパターンだ。
もっちーは、丸太ほどもある太い2本の腕を思い切り振り下ろす。
俺は、ギリギリまで相手を引きつけると、すんでのところで右に攻撃をかわした。
ゴッ! という鈍い音が響き、めり込んだ拳が地面を揺した。
俺は、カンウターぎみに相手の喉元へ食らいついた。
前回は、相手の威嚇に圧倒され初撃をもろに食らってしまったのが敗因。もう同じ轍は踏まない。
喉元へ食らいつき、じわじわと相手の体力を奪う。メキメキと首の筋がきしむ音が、直接脳に伝わってくる。
俺を振り払おうと、必死にもがくもっちー。しかし、もがけばもがくほどに首筋に突き立てた牙がめり込む。俺は離れまいと執拗に食らいついた。
相手の体力ゲージが100から75になったその時、突然左わき腹に衝撃が走った。それは、感電にも似た衝撃。もっちーの重たい拳を食らってしまったのだ。
すぐさま距離をとり体制を立て直す。モニター左上に表示された体力ゲージが、100から60に減った。
わき腹への衝撃は相当なものだが、痛みが長引かないのがせめてもの救いだ。
今の攻防を見る限り、もっちーの攻撃力は凄まじいが、動きは大きく、なにより遅い。
俺は、リアルなライオンのしなやかさを最大限に活かし、素早い動きで撹乱させる作戦に出た。
もっちーの周りを不規則に回りながら、相手の間合いギリギリまで踏み込み、そして引く。
もっちーは、俺の動きを目で追うのがやっとだ。
左右に激しく動き、もっちーの背後に回り込んだところで、背中に爪を立てた。
もっちーの右肩から左腰に掛けて、深く3本の筋が走る。もっちーは、受けた攻撃の衝撃により一瞬のけぞる形になった。
もっちーが振り向きざまに強烈な右の拳を大振りするも、それを読んでいた俺は左後方に一歩飛び それをかわす。
空を切る拳の音が、すぐ顎の下で鳴った。
空振りしたもっちーの右腕に噛みつき、また一歩飛び退く。
よし! やれる!
俺は、この期を逃さず、更に攻撃を仕掛けた。
左に大振りしたもっちーの拳が鼻先をかすめるものの攻撃を緩める手はない。
もっちーの左上腕に爪を立て、退き際に更にもう一撃。
左腕を庇うように片膝をつくもっちー。
更に攻撃を仕掛けようと踏み込んだその時、もっちーの拳の中から砂が飛んできた。膝をついたときに仕込んでいたのだ。
一瞬たじろぎ、視界がぼやけた。
しかし、そう感じたときには既に遅く、もっちーの渾身の振り下ろしを脳天に食らった。
突然の衝撃に揺らぐ視界。俺は、飛び退き巨大なゴリラとの距離を置いた。
はちきれんばかりに高まった心拍数。バーチャルでも感じ取れるほどの熱い呼吸。
左上に表示された体力ゲージは、僅か20。
もっちーも呼吸を整えている様子だった。
相手の体力ゲージは、残り5を示している。
お互いにこれが最後の一撃になるだろうと覚悟を決めた。
俺は、今までに発したことのないほどの雄叫びを放つと、その勢いそのままにもっちーへと突っ込んでいった。
「……終わった」
深い呼吸の後、ヘットギアを外す。
ヘットギアに搭載されたモニターには、赤く【DEAD】の文字。
俺は、汗ばんだ手でスマートホンを握ると、【コンテニュー】を押した。