#プロセスエコノミー
奔流 eビジネス
徳力 基彦
プロセスエコノミーに注目
過程を見せて顧客巻き込む
この半年、ネットかいわいで徐々に中国が高まっていたキーワードにあげられるのが「プロセスエコノミー」だ。昨年11月、起業家のけんすう氏が自身の「note(ノート)」で「『プロセスエコノミー』が来そうな予感です」と記事を書いたことで話題となった。
今年7月には、「アフターデジタル」などの著書で有名な尾原和啓氏が「プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる」(幻冬舎)という書物を執筆。予約販売を開始した時点でなんといきなりアマゾンの書籍ランキングの1位を獲得してしまった。「プロセスエコノミー」への注目度の高さが分かる。
「プロセスエコノミー」を一言で説明すると「プロセスを共有するところがお金を稼ぐメインとなる」ということ。従来の常識である「完成品としてのアウトプットを売る」という「アウトプットエコノミー」の対極にある考え方だ。
事例としてわかりやすいのは、アイドルグループNiziUを生み出したNizi Projectだろう。オーディションの過程というアイドルグループ結成のプロセス自体を番組として公開。正式デビュー前のプレデビュー曲である「Make you happy」が社会現象になるほどのヒット曲になることに成功した。第2弾としてボーイズグループの発掘も開始するようだ。
もちろん、オーディションを通じてデビュー前からファンを作る手法は、以前から存在していた。ただ、商品やサービスの品質の向上と、SNS(交流サイト)の普及などによる口コミの伝播力のアップにより、どんな業界の商品やサービスもコモディティ化が進んだ結果、差別化するポイントがプロセスにより始めている。
例えば、クラウドファンディングも、商品やサービスを作るプロセスに顧客を巻き込むという意味でプロセスエコノミーの1つであると言える。また、けんすう氏が運営するマンガサイト「アル」では、サービス開発の裏側を顧客に共有するコミュニティーを有料で運営している。
従来の完成品を販売するメーカーであれば、サービス開発は社外秘だろうし、顧客の意見を聴くのにリサーチ会社やインタビュー対象の人に謝礼を払っていただろう。それが、わざわざ自分でお金を払ってサービス開発のプロセスに協力してくれる顧客がいるというのはにわかに信じられないかもしれない。
ただ、こうした傾向は明らかに昨今加速している印象がある。自分が顧客になった場合を考えたら、単純に同じような品質の商品やサービスであれば、その商品の開発に自分が関わった商品やサービスの方を選びたいという気持ちはイメージできるのではないだろうか。
これまで、一般的な日本企業においては商品開発に対する思いなどはおおっぴらに言うものではなく、完成品の品質で勝負するという傾向が強かった印象がある。ただ、人が本当に感動するのは案外、商品やサービスの裏側にある人間の思いや努力、試行錯誤の過程だったりするものだ。
今まで、自分達では普通すぎると思っていたり、隠しておくべきだと思っていた「プロセス」が、実は差別化の突破口になるかもしれない。そんな逆転の発想で自らのビジネスを1度見直してみてはいかがだろうか。
(アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー)
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