やっと視聴できた田中一村の日曜美術館。20代の頃の一村の作品、金屏風いっぱいに描かれた椿の絵は躍動感に溢れていてハッとしました。無我夢中でやっても成果が出ない悔しさが滲み出ているような作品を観ていると、自分の思春期も思い出して心打たれました。奄美大島に移住して描かれた晩年の作品「不喰芋(くわずいも)と蘇鐡(そてつ)」には、蕾から花が咲いて実が成り、朽ちていく不喰芋の一年が凝縮されていて、一年前から介護生活になった母の姿がこの絵の描写と重なりました。老いていくのは自然なこと。頭ではわかっていてもいつまでも元気でいて欲しいと願ってばかり。それはやはり私のエゴだとあらためて気づかされました。なかなか手放せませんが。小さい頃から花や自然の中に身を置くことの大切さを教えてくれた祖母や母のことを思い出せた時間でもありました。見城さん、教えていただきありがとうございました。
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