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そのこさんのデザイニングジャーニー
トーク情報
  • そのこさん
    ♡ゆきち♡♡ゆきち♡

    私は1合のお米に対して0.8のメモリのお水で炊く硬めなごはんが好きです。物心ついた頃から今までずっと。

    私が実家で暮らしていた時は、食卓にはいつもその硬さのごはんが出てきていた。
    その後大学入学を機に実家を出て久々に帰省した時も、やっぱり母は硬めなごはんを炊いて私を出迎えてくれた。

    さらに数年が経ち、私も社会人になり、なかなか実家に帰らなくなった。
    ある時相当久しぶりに、突発的に実家に帰った時に母が出してくれたごはんは、昔に比べてだいぶ柔らかくなっていた。

    一口食べた私が少し怪訝な顔をしていたことに気づいた母が、
    「あ、ごはん柔らかすぎるわよね?おばあちゃんと一緒に暮らし始めたから最近は柔らかめに炊いてるの。ごめんね。炊き直そうか?」と言った。
    私は「ううん、最近は私も柔らかめが好きになってきたから大丈夫」と答えた。なぜか嘘をついてしまった。

    ちゃんと聞いたこと1度もなかったけど、母はどんなお米の硬さが好きなのだろう?
    父、私、祖母など、いつも誰かの好みを優先して、いつも誰かのためにごはんを作って、それが当たり前で、感謝もされなくて。

    「せっかく帰ってきてくれたんだから、遠慮しなくていいのに」と甲斐甲斐しく給仕する母の腕は昔よりだいぶほっそりしていて、どこか頼りなくて儚かった。
    「いや、遠慮なんてしてないし。大人になると食の好み変わることあるでしょ」と少し怒りっぽく返した。
    柔らかめなごはんと一緒に、溢れそうになる涙を吞み込むのに必死だった。

    今度実家に帰ったら、母の好きなお米の硬さを聞いて、私がその硬さでごはんを炊いてあげよう。
    きっと母は「ゆきちゃんの好きな硬さでいいのよ」と言うだろう。
    それでも、無理やりにでも答えさせて、1回でも多く一緒にごはんを食べよう。
    これまで母が私のために作り続けてくれた何万回のごはんの数は追い抜けないけど、1回でも多く、一緒に食卓を囲もう。

    そんなことをふと考えた今日なのでした。