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せーらーむーんのトーク
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  • わだぴん
    豊永阿紀(HKT48)豊永阿紀(HKT48)

    2017.06.23
    凍りのくじら/辻村深月

    豊永阿紀、中学2年生。真っ暗闇の海底を照らした光が、この本でした。

    と、書くと、大袈裟に聞こえますが、
    間違いなくわたしを生きやすくしてくれた、まさにひみつ道具のような本です。

    海、山、暗室、消毒液、夏、雨、アスファルト……。いろんな匂いのする一冊。わたしは、夏が来ると、また読んでしまいます。そして、何度読んでも、何度も心が動くのです。そんな一冊に出会えたことを誇らしく思います。

    前半の決して穏やかとは言い切れないものの、緩やかな日常が、後半、目を背けたくなる現実と、その一方での大きな大きな愛で、スピードアップしていきます。匂いとともに、たくさんの景色を見ながら、物語は進みます。


    主人公の理帆子は、あまり読者からすぐに共感を得るタイプではないらしいのです。だけど、わたしはその理帆子の一つ一つの感情の動きが、自分のようで、たまらなくなります。周りよりも知識が豊富だと思っている上で、詰めが甘いことも自覚している。人を信じてないふりをして、どこか人を信じていたくて。目の前のことの現実味が薄いことだったりとか。理解しがたいと思われるでしょうか。
    疎外感と優越感。そのどちらでもないようで、そのどちらも十分にある感情。理帆子が感じているそれに、わたしも覚えがあるのです。そして、それが諦めへと変わるのは、早い。でも、諦めきれていない自分がいる。

    そんな理帆子が、いろんな人と出会って、出会っていた人の思いに触れて、愛に触れて、怒りに触れて、願いに触れて、変わっていく、わけではなくて、生きていけるようになる。

    ぜひ、読んでほしい1冊です。
    豊永の脳みそ、ほとんどこんな感じです。理帆子ほど、大人にはなれないんだけど。

    いま、息苦しい全ての人が、あの光を浴びることができますように。

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