蓮如上人と一休のやりとり
浄土真宗の中興として有名な蓮如上人と、「一休さん」のアニメでおなじみの一休和尚との間にこんなエピソードがあります。
時は室町時代。七曲がり半に曲がった一本の松の木の前に人だかりができていた。
そこへ蓮如上人が通りかかられる。
「一体、何の騒ぎか」
「これはこれは、蓮如さま。実は、あの一休和尚が“この松を真っすぐに見た者には、金一貫文を与える”と、立て札立てたので、賞金目当てに集まっているのです」
なるほど、ある者は松の木にハシゴをかけ、ある人は寝転がり、またある人は逆立ちしたりと、それぞれに工夫を凝らして松を見ている。だが、真っすぐに見たという者がない。
事情を聞かれた上人は、
「また一休のいたずらか。わしは真っすぐに見たから、一貫文をもらってこよう」
と事もなげに言われたので、一同仰天した。
「おい、一休いるか」
気心知れた仲だから、呼びかけも屈託ない。
「あの松の木、真っすぐに見たから一貫文もらいに来たぞ」
出てきた一休さん、
「ああ、蓮如か、おまえはあかん。立て札の裏を見てこい」
と答える。実は立て札の裏には、“蓮如は除く”と書かれてあったのだ。
戻られた蓮如上人に気づいた人たちが、
「蓮如さま、一体どうやって真っすぐに見られたのですか?」
と身をのり出して尋ねると、蓮如上人はこう答えられた。
「曲がった松を、『なんと曲がった松じゃのー』と見るのが、真っすぐな見方だ。曲がった松を真っすぐな松と見ようとするのは曲がった見方。黒いものは黒。白いものは白と見よ。ありのままに見るのが正しい見方なのだ」
「なるほど!さすがは蓮如さま」
一同、感服したという。
蓮如上人と一休 ありのままに見る
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