5月17日(日)
家の引き出しを整理していると、
包帯が出てきた。
もう使いそうにもなかったので
なんともなしに左腕にぐるぐると巻いてみた。
かっこいい。
左腕すべてを覆う包帯。
まるで何かの呪いを封じ込めているような。
これはかっこいい。
左腕をだらんと垂らし、
鏡の前に立ってみる。
しぶい。
絶対に強い、こいつ。
もっとなにかないかと引き出しを漁る。
眼帯が出てきた。
左目に装着し、鏡の前に立つ。
しゃびい
("しぶい"のもうひとつ上の表現)
だいぶしゃびい。
さらに引き出しを漁ると、
膝サポーターがでてきた。
左足に装着し、鏡の前に立つ。
しぶくない。
急にしぶくなくなった。
左側弱いやつにしか見えない。
左から何が来たの?
車?
サポーターは外し、
眼帯と包帯は付けた状態で
コンビニに行ってみた。
店員や他のお客さんが
「絶対強いやつきた…!」というような目で
僕を見てきている。
僕は周りにギリギリ聞こえるくらいの声量でボソッと
「最近は魍魎(もうりょう)たちもおとなしくなったな…」
と言った。
コンビニ内の空気が張りつめる。
恐ろしい空気。
すると立ち読みしていたおじさんが
「油断するな…印罪(いんざい)の死時計はまだ動き続けている…」
と、ボソッと言った。
入ってくるな。
勝手に。
するとおばさんの店員が
「幽燈門(ゆうとうもん)が開いたのも気になるわ。次の魄黄泉会議(はくよみかいぎ)で何かが動き出しそうね…行ってみたら?」
と言った。
行かない。
入ってくるな。
勝手に。
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