6月4日(木)
白ごまを机の上にサッサっと振りかけ、
それを一粒ずつ数える。
いつ頃からだろうか。
腹が立つことがあったり、どうにも納得いかないことがあると
いつもこうやって心を落ち着かせてきた。
無心で数えているわけではない。
粒を数える度、自分の心が浄化されていくイメージ。
一粒一粒、数えながらよけていく。
よけていないごまは、自分の邪心。
数え、よけることによって
自分の邪心を浄化していく。
そして今回、
信じられない量のごまが出た。
こんなに出ると思わなかった。
びっくりした。
小さな丘のようになっている。
今からこれを数えなければいけないのだろうか。
しかしこれは全て自分の邪心なのだ。
この量の邪心を持っているのだ。
僕はひたすら数えた。
1時間半ほど経ち、
数えた粒が4000粒を超えたあたりで、
僕はふと思ってしまった。
「5000粒ぴったりになるかもしれん」
残ったごまの量的に、5000粒ぴったりの可能性が出てきた。
しかしそれを意識してしまうと、浄化どころではない。
必死に考えないようにする。
ただ数え、浄化することに集中する。
しかし
「5000粒ぴったり」
これが頭からなかなか消えない。
また新たな邪心を産み出してしまった。
たとえ5000粒ぴったりだったとしても
これはもう5001粒だ。
分かった。この邪心も浄化する。
数えきった時にはこの邪心も消えるのだから。
大丈夫、数え終えたら全て浄化されるのだ。
そう言い聞かせ、必死に数えた。
そして、
ついに全てのごまを数え終わった。
4994粒。
真っ暗なテレビ画面に映っている、
どこかに6粒ないかと探す人間の顔の、
醜いこと醜いこと。
前へ次へ