7月27日(金)
叔父がディナーショーをやるということで行ってきた。叔父は歌手や芸人ではなく普通のサラリーマンなのだが、3ヶ月に一回ディナーショーをする。興味本位で素人が始めたディナーショーが口コミで広まり、今となっては200人を超えるお客さんが集まる。人気の秘訣の一つに料理がある。ディナーショーの料理は叔父の奥さんが作る。叔父がいつも食べている普通の晩御飯のメニュー。さすがに200人分の料理を一人で作るのは無理なのでスタッフが手伝う。別に特別に美味しいわけではない。もちろんまずくもない。それがいいらしい。ディナーショーが始まり幕が開くと叔父が板付で椅子に座っている。目の前にはテーブルがあり、その上にはお客さんたちと同じご飯が乗っている。叔父はご飯を食べる。それを見ながら客もご飯を食べる。特に面白い話とかはしないが、たまに舞台上から「この里芋のやつおいしいんすよ」など話しかけてくれる。みんなご飯を食べ終わると、次は晩酌の時間。酒もアテも叔父と同じ物が出される。叔父が「ビールと…今日のアテはどうしようかな…えーっとじゃあ………イカの刺身!」と言うと客席からは「お~~!」という歓声が。みんな同じものを食べていたので、叔父がイカの口ということは客もイカの口になっているのだ。普通のおじさんと一緒に普通のご飯を食べ、酒を呑む。この日常に限りなく近い非日常空間が客の心をつかみ、これほどの規模まで育っていったのだという。僕はあんまり楽しくなかった。
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