ログイン
詳細
ロングコートダディ堂前

8月30日(木) 久々に突き指をした。街をぶらぶらしていると、交差点で少年がギターを弾いていた。ギターは決してうまいとはいえないものだったが、少年は汗をかき一生懸命弾いていた。じーっと少年をみていると、少年が「お兄さん、良かったら歌ってよ。俺、歌下手でさあ。頼むよ」と言ってきた。僕は「まず敬語で話せ。腹立ってまうから」と言った。なぜこんな事を言ってしまったのかは分からない。自分でもびっくりした。年下になめられたくない、という強い気持ちが溢れ出てしまったのかもしれない。少年は「え、あ。すいません。はい。大丈夫です」と言った。僕は「いや、ごめん。なんか言ってしまった。ごめんごめん」と言った。少年は「はい、すいませんでした。大丈夫です」と完全にひいてしまっている。ギターだけでなく気持ちもひいてしまったのだ。 そう。ギターだけでなく気持ちもひいてしまったのだ。僕は「ほんまにごめん。自分でもなんでこんな感じになってしまったのか分からん。気にせんといて。頑張って」と言い置いてあったギターケースに千円札を入れて帰ろうとしたが、風で舞って道路に飛び出してしまい千円札が大きいトラックに轢かれた。僕はもう1枚千円札を取りだし、少年の服の胸ポケットに直接ねじ込もうとしたがポケットのイラストだったのでそのまま手がつるんと滑っていきギターにガンっと指をぶつけた。

前へ次へ