【この流れに身を任せていれば、どこか遠くの知らない場所へたどり着けるのだろうか】
家から徒歩6分の所にある、河川敷の小さな公園のベンチに腰かけた洋介はそう呟いた。少し気を緩めるとその中へ吸い込まれそうなほど鮮やかで深緑の水がそこには流れていた。川の色というのは濃ければ濃いほど水深が深くなっているということを昔祖父から教わったのをふと思い出す。
その時、少し下流の方で小さな波紋が生じたのを、洋介は見逃さなかった。その波紋はさらに下流の方でまた起こり、みるみるうちに下流の方へ下ってゆく。
「追いかけなきゃ」
そんな謎めいた使命感に駆られた洋介は川に沿ってその波紋を追いかけた。その波紋が生じる度に洋介の走るスピードも比例して上がってゆく。
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