プツン。。
ギターの弦が切れた。
「まだ予備あったっけ。」
不運にも大好きな曲の落ちサビ前で弦が切れたことに三玖は苛立ちを覚えた。
実家に住んでいる時から使っている木でできた古臭い引き出しを、ガサガサガサッと漁る。頬を伝ってツーっと汗が一筋。エアコンが壊れているせいで、8月中旬にもかかわらず、部屋の中はサウナ状態になっていた。その暑さも重なり三玖のイライラは加速してゆく。そんなふうに苛立ちは飛び火するものである。弦はなかなか見つからない。
探すのを諦めた三玖はそのまま横にあるローベッドにゴロンと横になり天井を見つめた。
東京に出てきてまだ2週間だというのに三玖のストレスは少し啄けば破裂しそうなほど限界まできていた。慣れない人間関係、田舎では味わうことの無い人混み、そしていや〜な下水道の匂いなど気にし始めるとキリがないほど東京はストレスに溢れていた。
ジリジリと締め付けてくるような暑さの中、三玖の頬を伝ってきたのは先程とは違い、汗ではなく涙だった。
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