#やめるな外科医
No.600
『やめるな外科医』
中山 祐次郎著
(2022/04/10 幻冬舎文庫)
2022/04/09
シリーズ4作品目である。この頃、薮さん(中山先生)の術中にはまっている様な気がするが、このあと何作品続くのだろうか?
とにかく読みやすい。余白たっぷりでテンポの良い会話が続き、読む速度が遅い私でも、ページを繰る快感が蘇ってきた。正味5〜6時間で一気に読み終えてしまった。それと、登場人物が少なく、みな個性的で直ぐに思い出せる。今回登場の訳ありで孤独な患者の上品な上田さんと下品な下澤さんも。(上田さんや下澤さんの人生を知ると胸が締め付けられるのだが、電車内で噴き出してしまった。)
あれ、いつからだろう?
描写がかなり視覚的でわかりやすい。処置中のシーンはもとより、何気ない病院の細々とした描写、居酒屋やレストラン、電車の乗客までディテールが詳しく描かれていて、映像化しやすそうと思いました。ドラマの次は映画になるかもね。
医師として6年目の隆治。後輩の凛子が順調に育ち、余裕ある行動にこちらも落ち着いて読める。出だしはである。そして、タイトル通りやらかして、岩井さんに怒られ、また落ち込む。今回は先輩女医佐藤に怒られるシーンは少なかったけれど…。医師として男として人として、悩み葛藤し迷う。薮さんが分身の隆治を通して問いかけるいろいろな矛盾に答えを探るべく気持ちよくまた巻き込まれる。答えは「自分で考えろ!」なんだけれど。
この本の良いところは患者になり死ぬ準備が出来ることだと思う。余命幾ばくもない患者にも寛解して人生をやり直す人にもそして医師にもシミュレーションできる。延命治療を拒絶する上田さんに説得をあきらめたり、ICU室での葵との永訣のシーンは命をやりとりする現場ならではの緊迫感や諦念、悲哀を感じて忘れ難い。リアル過ぎて時々怖いが。
とても良い作品でした、藪さんありがとうございます。
【お願い】
前作で登場した佐藤玲と交際相手?の渋谷春海とのその後や西桜寺凛子や吉川看護師の生い立ちが知りとうございます。是非
【登場人物】
雨野隆治:6年目の医師。牛之町病院勤務。
佐藤玲:先輩医師
岩井:部長
はるか:隆治の彼女?
吉川佳代:気立ての良い看護師
西桜寺凛子:後輩医師
日向葵(ひなた あおい):末期癌患者
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