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「オースミシャダイ」と聞いて、むかーし昔のお話。 1991年の有馬記念なんです。 秋の天皇賞では1位入線するも降着、ジャパンカップで4着に敗れたとはいえ、前年の菊花賞制覇から親子三代の春の天皇賞勝利で、紛れもなく横綱級の強さを見せてきたメジロマックイーンが、断然の一番人気。 一方、ダイユウサクはというと、正月の金杯と阪神競馬場新装記念競走に勝ったくらいで、マイラーか走っても2000メートルまでで、短中距離でまあまあの馬、といった評価。 当時、二人の長女←が生まれ、当然に結婚もままならず、二人の母親からの要求で、認知も戸籍もいらないから、養育費だけはなんとかしろ、と言われた、とあるクズ男が、競馬ブックを片手に一攫千金を目論んで、しみじみと馬柱を眺めていたそうな。 手持ちはそこそこにあるけれど、なんとしても何千万円かになる馬券はないものかしら、なんて考えながら見ていると、5枠に目が止まる。 「ダイユウサク」と「オースミシャダイ」。 「ダイ」と「ダイ」。 サイン馬券なんて後付けの大嘘と莫迦にしていたけれど、両馬にもチャンスはあるのではないかと、調べてみたそうな。 15頭の出走の中の、ブービーと最低人気の同居枠。 オースミシャダイは、どうやら引退が決まっての出走らしい。コメントも最後の花道のG1出走といった雰囲気で、勝負気配はゼロ。 ダイユウサクの方は、チャンスはある、とのコメント。確かにこの一年は掲示板を外れない好走が続いているし、なにより前走を、マイルとはいえ勝っている。 買うならば、ダイユウサクの方だ。 マイルから中距離が得意な馬なら、サッカーボーイは3着したことがあるし、なによりそのレースを勝ったのはオグリキャップだった。 2着は、我が永遠のサラブレッド、タマモクロス。 当日となり、いつものウインズ梅田の4階へと向かい、モニターのオッズを確認するゴミ男。 メジロマックイーンとダイユウサクの馬番連勝式のオッズは70倍前後。これに有り金の半分を叩き込んだ。 当たれば、要求されている養育費の2/3にはなるであろう大金を、ドブに捨てる覚悟のクソ男。 ほどなく、パドックが映し出されるのを、ボーっと見ていたカス男は、ある人物に目が釘付けになる。 内藤繁晴調教師。 薄い色の付いた眼鏡と、セミオールバックのいつもの顔。 だが服装は、黒のダブルにグレーのネクタイ。優勝表彰台に上がる気満々のその出立ちに、アホ男は、電車賃も残さず、ダイユウサクの単勝に残りの有り金全てを賭ける暴挙に出た。 内藤先生の漢気に、賭けたのだ。 オグリもボーイもマイラー。 タマモクロスも金杯。 ブツブツ呟きながら、ハラハラとモニターに映るレースを見る。 最後の直線、粘るプレクラスニーをかわそうとするメジロマックイーン。我がダイユウサクは内に閉じ込められ・・・・・・ていなかった。 奇跡的に開いた一頭が通れるか通れないかの隙間を、ダンプカーの突進もかくやたる勢いで、上がって来た。 「差せや!!!!」 マックイーンが負けそうな展開に、茫然として静まっていた、ウインズ梅田4階の何百人の中で、叫んでいたのは、二人だけだった。 初対面の大声ブラザーズは、互いに馬券を見せ合い、額面の大きさで、一人ジャーマンスープレックスをかましそうなほど仰反る、大天狗のバカ男。 無事に養育費も払えたとさ。 めでたし、めでたし。←え むかーし昔のお話。 ( 。・_・。 ) 🏇

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眠いんですすめサイボーグ009
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