削除されたユーザー削除されたユーザー2016年01月08日 20:02彼女は1人で正月の晴れ着を着て、浅草寺に居た。 (あの人がまた私の店に来ます様に…)とお祈りした。 彼と初めて会ったのは、大手電器会社の面接の待合室でだ。 たまたま隣り合った彼の手には、山小屋に野山が写っていた。 彼女は、その写真の景色に見覚えがあった。 女性『あの…すいません、故郷はどちらですか?』 男性『私は山梨ですが…何か?』 彼は、少し警戒した様子で写真を裏返した。 女性『うふふ、実は私も山梨出身なんですよ。』 彼は警戒をといた様子で、女性と既に打ち解けあっていた。 その後、彼は面接に受かったが彼女は面接に落ちてしまった。 彼は、面接の時に彼女の夢を聞かされていたのであまり気兼ねはしなかった。 かえってピアニストになる事を、応援した。 彼には何故か彼女に哀愁があり、其れを生かしたピアニストに成って欲しいと願った。 それから何年か彼女と付き合い、大晦日…除夜の鐘を突いたり、二人で愛を育んできた。 しかし、彼が昇進するたび彼女は不安になった。 彼女は音大を出て、幸い大学教授の計らいで(ライム・ライト)という小さなパブで働かせて貰っている。 彼が、大手電器会社の社長にまで出世してからも夜になると(新世界より)を聴きに来て10ドルコインをくれていたのにもう半年も来てくれない…。 今頃、彼はどうしたのだろう? 何処にいるのだろう? 今でも彼女は彼が来る時間になると(新世界より)を引きながら、白いドレスを纏っている。