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2022年(令和4年)5月15日(日曜日) 讀賣新聞 21面 文化面 掲載 本 よみうり堂 書・榊 莫山 証言 X 現代文芸 50 [6] 見城徹さん  けんじょう・とおる 1950年、静岡県生まれ。幻冬舎社長。著書に『編集者という病い』『異端者の快楽』など。  今年2月に89歳で亡くなった作家の石原慎太郎さんの体調が、悪くなり始めたのは2年前だ。幻冬舎社長の見城徹さん(71)は、著者が出したいと言った本で、自分が面白いと思う本は全部出版すると決めた。 石原慎太郎さんの死と幻冬舎 2022年  限りある命 表現こそ救い  「どんな気持ちだったんですか」と記者が聞くと、「そんなばかな質問をするなよ」。  大きな声で言った。「命の期限が限られていると思ったからだよ。そこにビジネスはない」  見城さんは25歳の時、石原さんと会った。俳優の裕次郎さんのことなどを描く小説『弟』が、幻冬舎初のミリオンセラーになるなど深くつき合ってきた。  短編29作を本人と選び、全2冊の『石原慎太郎短編全集』を編んだ。昨年12月、東京・田園調布の自宅に見本を届けた際、作家は本を抱きしめ、涙を流した。  角川書店を退社し、1993年に幻冬舎を設立した見城さんは、創業後から、五木寛之『大河の一滴』や郷ひろみ『ダディ』、天童荒太『永遠の仔(こ)』など、ヒット作を連発してきた。売れる作品には、①オリジナリティー②明快さ③極端さ④癒着──四つの要素があると説明する。  「テレビで宇宙人に今、インタビューをしたら、視聴率100%を取れる。小説も映画も同じでしょう。リアリティーをもって『極端』を書ければ面白いんですよ。極端なものが成功して書ければ、明快に見える。それはつまり、オリジナリティーを持っていることを意味する」  「その本が、初めからテレビ局とドラマ化が決まっていたり『癒着』があれば、売りやすい。癒着は戦略。悪いことでも何でもない」  出版物の売り上げは、96年の2兆6500億円がピークだ。出版不況と呼ばれる状況は続き、街の書店も減り続けている。2021年は紙と電子を合わせて1兆6700億円で、3分の2以下に落ち込んでいる。  「出版社に未来はない。でも、俺はやり続けたい。人の精神の営みを描いて面白いもの。人が生まれて死ぬ宿命がある限り、表現は絶対に必要なんですよ」幻冬舎でも近年、インターネット関連の事業を展開している。これは、経営のための「プラットフォーム」(基盤)作りだという。  「表現しか、救いはない」  幻冬舎の創業者にみなぎるものは、たじろぐほどの圧倒的な熱量だ。 (待田晋哉) ※「証言X現代文芸50」は第1・2・3・5日曜日掲載です。 ( 。・_・。)φ_

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