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陰呉 薔葉(イングレ シキハ)

「それだけ似た双子だったのさ。初対面の人間なら、誰でもわからないほどね。 いよいよ、成人の儀式の場。 (ロクは扇子を構えると驚くほど巧みに床を叩いたり扇子を開いたりする音でその情景を演出する) 壇上に上がる鹿苑、その視線の先には、鹿苑が生きていく唯一の救いだった弟、黎二。 刹那、鹿苑の体から紅の鮮血が飛び散る。 黎二はその瞬間、叫ぶ。 「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ! にいちゃん!にいちゃん!嫌だ!にいちゃん!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だァァーーーッ!」 それはもう、狂気とも言えるかもしれないね。 そのまま黎二は座席を飛び出し、頽れる兄の体を抱きとめる。」

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神子と忌子
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  • 陰呉 薔葉(イングレ シキハ)
    陰呉 薔葉(イングレ シキハ)

    「『にいちゃんが死ぬなんて嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』
    純粋な否定の感情が黎二を埋め尽くしていく。
    村人たちに縛られ絶望以外の何物でもない人生を送ってきた黎二には、鹿苑だけが心の拠り所だった。
    嫌だ嫌だ嫌だ、そう叫ぶ黎二はいつしか、声が出せなくなっていた。
    声が出ない。口を開けば、嫌だ嫌だと絶望の叫びが心も体も埋め尽くす。

    儀式は廃止された。
    鹿苑と黎二という双子は鬼となり、あたりの村を襲っては食い潰した。

    そんな時、ある奴が鹿苑と黎二を拾った。
    二人は食い殺そうとそいつに襲いかかったが、軽々と攻撃をかわされた上抱きしめられた。
    暖かいぬくもりだった。」

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