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リーマントラベラー東松
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今回、なぜ僕は中米を目指したのか。‬加えて、いつも旅に出るときに僕の背中を押してくれるものについて、書きました。 ✈︎✈︎✈︎✈︎✈︎ 『ぜんぶ片桐はいりさんのせいだ』 2018年の年越しは、中米・グアテマラで過ごすことに決めた。 グアテマラと聞いて僕が知っていることといえば、メキシコの下にあって、コーヒーが美味しいことくらい。よりによって、そんな国で新年を迎えることになるなんて、ぜんぶ片桐はいりさんのせいだ。僕はいつも一冊の本と出会い、本に背中を押されて、旅に出る。 平日は広告代理店でサラリーマンをしながら、限られた休みで世界を旅する僕であるが、旅への欲求を掻き立てるものは、激務の生活の反動ではない。いつも、本である。 特に紀行文。筆者の綴った文章と限られた枚数の写真から、頭の中でぐるぐると想像をめぐらせ、その"世界"を脳内旅行する。まるで、別の世界が見えるゴーグルをかけたかのように――。だから紀行文は、誰にも邪魔されず、没入して読むに限る。 3ヶ月前のこと。友人に勧められて、『グアテマラの弟』(片桐はいり著・幻冬舎)を読んだ。女優・片桐はいりさんとグアテマラに住む彼女の実弟にまつわる、痛快なエッセイである。本文中で彼女がグアテマラへ行った話が始まるやいなや、僕もパスポートを持ち出して、脳内旅行を開始した。彼女の文章から、まだ行ったことのないグアテマラという土地の風景、喧騒、匂い、味を勝手に想像する。そしてそこを旅して、彼女の世界を疑似体験する。ラテンのリズムで過ごす現地の人々との交流による、クスッと笑えるストーリーの数々が、より僕の想像力を掻き立ててくれて、僕は脳内で、数時間のグアテマラ旅行を終える。 しかしながら、そんな脳内旅行に連れて行ってくれる本に出会うと、おかしなことが、頻繁に起こる。脳内旅行から帰国すると、無意識のうちに、手が、そして指が動き、気がつくと、スマートフォンでその土地までの航空券を予約しているのである。本が勝手に、そうさせるのだ。ぜんぶ本のせいだ。だから、僕は、こんなにも旅行に行くのは、いつも本のせいにしている。(そちらの方が、上司に会社を休む理由を説明する上で、ただ休みたいと伝えるよりも都合が良かったりもする) 脳内旅行に誘われ、僕が旅に出る言い訳に使った本は、数知れない。『ラオスにいったい何があるというんですか?』(村上春樹著・文藝春秋)を読み、何があるのか確認しにラオスへ向かった。筆者同様、この問いに対する明確は答えはでなかったが、そこにしかない景色や文化、そして暮らしが、確実にそこにはあった。『辺境・近況』(村上春樹著・新潮社)を読んだ時は、バスで縦断するメキシコに惹かれて、メキシコに向かった。サラリーマンゆえに長い休みは取れず、バスでの旅はできなかったのだけれど。 今日も僕は、本のページをめくり、脳内旅行に出かける。そして帰国したら、本のせいにして、本当の旅に出るんだ。

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リーマントラベラー 〜働きながら世界一周〜
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