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茜250cc 善家カズマサ

小泉さんは漫才の出番前、セリフを少しでも変えたいときは必ず変える旨を伝えてくれる。 例えばそれが「野菜」というセリフから「お野菜」に変えるぐらいのことでも伝えてくれる。恐らく急に違ったセリフを発することで僕がテンパらないように気を遣ってくれているのだろう。彼は優しいのだ。 といっても僕も約10年間漫才師をしているのでネタ中に本来のセリフと変わったことを言われてもある程度対応できる。だが彼は必ず変える所は出番前に伝えてくれる。 そういえば先日「ちょトイレ行ってくるわ」の投稿をしたが、劇場で僕が小泉から離れた場所で他の芸人と話している時、別にネタ合わせ中でもないのにわざわざその場所に来て「ちょトイレ行ってくるわ」と言う。彼は何かと伝えてくれるのだ。 圧倒的に出番前に言われる機会が多いセリフの変更は、「善家と小泉でって言うわ」だ。 というのも通常なら小泉の「どーもー!茜250ccです。お願いしまーす!」から漫才が始まるのだが、トップ出番のときや寄席っぽい雰囲気のときは「どーもー!善家と小泉で、茜250ccです!って言うわ」と伝えてくれる。 正直、「善家と小泉で」があろうが無かろうが僕はセンターマイクの前について言う言葉は「お願いしまーす。」だけなので伝えてくれなくても良いのだが、小泉は絶対に伝えてくれるのだ。 そして今日の極森ネタ。毎度お馴染みのトップ出番だったので開演の10分前くらいに袖に座っていると「善家と小泉で、って言うわ」といつも通り小泉が伝えてきた。 そして今日はもう一つ、「そのあとにトップバッターなんで頑張っていきましょう、って言うわ」とも言ってきた。 うん。わかりました。僕は返事した。 正直、わざわざ言ってくれなくても全然良いのだが彼なりの優しさであろうから「いちいち言うて来んでもええんやで」とは言わない。多分彼なりの優しさなのだ。 僕は「わかりました」とだけ返事する。 いつもならこの会話だけで出番を迎えるのだが、今日はいつもと違った。 「俺がトップバッターなんでがんばっていきましょう!って言ったらスッと善家から漫才のネタ入って」 うん。別に言われんでも入るから。と言いかけたが、 「今日はいつもと違って善家から喋り出すネタやから、一応言うとこうと思って。その方が入りやすいやろ?」 僕を思いやっての報告だったらしい。 彼はやはり優しい。 少しほっこりした気持ちになった所で出囃子が流れ、モニターに茜250ccの文字が表示された。 ほっこりした気持ちになってたので「今年もこいちゃんとたくさん漫才するんやなあ。去年よりもたくさんしたいなあ」とか考えていた。 「お願いします、お願いします」袖にいるスタッフさんたちに挨拶をしてセンターマイクへ向かった。 「どうもー!善家と小泉で、茜250ccですお願いしまーす!」 小泉の挨拶のあとに僕も「お願いします」と言う。 「…………」 少し待ったが小泉から予告されていた「トップバッターなんでがんばっていきましょう!」 のセリフが来ない。 不安になって小泉の顔を見ると何か言いたげな顔でぽかんとしている。 「…………」 無限に感じるこの変な間。 本日小泉「トップバッターなんでがんばっていきましょう!」のセリフ、飛ばしました。

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茜250cc 善家カズマサのトーク
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