或る夜。鮨屋にて。 ルームサービスばっかりじゃ食が進まないからと、母親連れて銀座へ。まだ9月のお話。 母さん、もうネタには味がついてるから、お醤油ください。なんて言っちゃ駄目だからね。 カウンターに座った自分たち。左側では、若手二人組が年収が五千万だとか六千万だとか口にして呑み、中トロをつまんでいた。外資系コンサルだとか。 ひとしきり賑やかだった彼らが帰った後、 右側の年配のスーツ姿の男性方は、五億とか六億とかの話を静かに語ってたっけ。 母さん、いくらタダだからって、ガリをお代わりしすぎだよ… 帰りのタクシー。いつかあの若手も上には上がいるって思い知る日がくるのかなぁ。って独りごちたら、 半分居眠りしてた母親が呟いた。 時すでにお寿司。