仕事をするということ。 学校を何とか卒業した後、夕方は渋谷センター街あたりでインタビューして 夜はクラブで踊るという毎日。 たまたま109近くでご飯を食べた先輩が、自分の派手な格好に呆れながら誘ってくれた。 「ヒロシさぁ、いい歳してチャラチャラもないべ。口きいてやっから働けよ」 たしかに短パンはB'zの稲葉さんしか似合わないか。まるで極楽鳥みたいな格好をしてた。 翌週連れていかれたのは、銀座・松屋デパートの子会社。だから築地。大きいけど古びたビルの7階だった。 自分は就職活動さえしたことがないダメ人間だった上に その業界のことは全くのド素人。右も左もどころか前も後ろも分からない。 だから、諸先輩たちにクオリティの部分で追いつくには努力を重ねるしかない。たとえバイトであっても。 働き始めてから、徐々に仕事の量を増やしていく。誰よりも電話対応をし、誰よりも顧客の相談に乗り、誰よりも取引先に会いに行く。 たまに勘違いしてる人がいるが、ごく一握りの突出した人を除いて人間の能力なんて大して変わりはない。だから、自分ようなレベルの男は時間をかけるしか戦う方法はない。 誰よりも朝早くビルに行き、管理室に寄ってカギを受け取り7階の事務室を開けて、駅前で買ったサンドイッチを頬張りながら仕事に入る。 夜は深夜まで残って課題に取り組み最後に消灯し、カギを管理室に返却する。 それを毎日繰り返す。休みは何ヵ月も全く取らない。 仕事とはそういうものだと思う。若い時は尚更だ。質より量。 当時、従業員は70名は在籍していたが誰も自分のような行動を取る者はいなかった。当たり前か。時給制だからね。 でも自分は毎日毎日愚直に働いた。辛いと思ったことは1度もないまま日々が過ぎて行った。 3年目ある日、子会社の社長に呼ばれた自分は現場のNo.2に任命された。自分の給料を自分で決められる立場になっていた。 # 人は自分が期待するほど、自分をみていてはくれないが、がっかりするほどみていなくはない。