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Darkness of Law 法の闇
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  • とある弁護士
    とある弁護士

    ぬかるんだ地面に足をとられながら、目の前の薄く安い木材で作られたであろう扉をたたいた。
    「秋山さん、いらっしゃいますかー。」
    雨の音、トタン屋根に雨が叩きつけられる音だけしかしない。
    部屋には明かりもない。
    誰もいないのだろうか。
    一緒にいる勝田も何でこんな雨の日に、よくわからない集落に来なくてはいけないのだという気持ちを表情に出し、眉間には深い皺ができている。
    「いないんですかね。」
    勝田は見ればわかることを自分に言い聞かせるように言った。
    「裏行きますね。」
    おれは電気、ガスメーターを見るために裏の洗濯干し場に回った。
    貯めた雨水のごとき泥を踏みしめる度に靴の中に水が侵食してくる。

  • とある弁護士
    とある弁護士

    おれはしがない街の弁護士。
    いわゆるマチベンだ。

    弁護士が肉体を使う職業だというのは弁護士になって知った。

    司法試験受験時代想像していた空調の完備したキレイなオフィス、如才ない秘書なんてものは幸せな事務所に勤務する弁護士に与えられた特権であることを知った。

    おれは弁護士になってありとあらゆることを自分でやらなければいけない状況にあった。

    秘書もおらず、空調もノイズ交じりの気分屋だ。
    事務所は二年後に取り壊す予定のビルの一階を借りて開業した。
    たまたま飲み屋で知り合った気のいいおやじさんがビルのオーナーだった。賃料は五万でいいという。
    部屋は最終的に壊すから、基礎を破壊しない限り何をしてもいいという太っ腹なおやじさんだ。名字は佐々木、だから、おれはササさんと呼んでいる。

    ササさんは七十を超えてあとは優雅に過ごすだけ。暇を持て余してるとのことで暇があれば事務所に来る変わり者だ。どうせ暇ならボケ防止に電話番をしてくれないかといったら、思いのほか喜んでくれた。ドラマみたいだねぇとつぶやくササさんに、おれもなぜかそうっすねと返して二人で笑っていた。

    そんな吹けば飛ぶような法律事務所、それがLegal Hack法律事務所だ。