自分に嘘つけば自分を失うよ 月に雲がかかっても 信じてるその道を進め！ 何度 傷つけば痛みを忘れる？ 赤い血を流せば命を思い出すさ 道に倒れ 大の字に 空を見上げて思う 真の強さとは 夢を見る者 愛を信じる者 乃木坂46『月の大きさ』より抜粋 大園桃子が嫌いだった。 泣いてばかりいて、声も小さくて、『乃木坂46』というアイドルの看板を背負う覚悟がないのだろうか？と思ったからだ。 3期生は、久保・山下・与田を筆頭に「覚悟の塊」みたいな子たちだと思っていたから尚更そう感じたのかもしれない。 しかし最近、少しずつその考えは変わってきた。 彼女はオーディションを受けるまで「乃木坂46のことを知らなかった」と話していた。 つまり、彼女は3期生でありながら「乃木坂46の1期生」と同じ境遇にいるのだと気付いた。 「乃木坂46」というグループがどんなグループで、どんなアイドルかも分からないまま、「芸能界」という世界に飛び込んできたのだ。 AKB48全盛期に「公式ライバル」として登場した乃木坂46。国民的アイドルから芸能界のことを何も知らない新人アイドルがその座を奪うのは簡単なことではなかったし、そもそも「ライバル」という立場に見合う存在になることすら難しかった。けれど時間をかけて今の地位を築いてきた。 そして、AKB48とは違う独自の地位を築いた乃木坂46。3期生たちはその中に飛び込み、「先輩たちのライバルになれ」という無言の圧力と戦わなければいけないのである。 特に大園桃子は他のメンバーに比べ、地下アイドルとしての活動も、子役としての活動も、芸能界への憧れもなくこの世界に入ってきた人間だ。その戸惑いや緊張も桁違いだったに違いないし、むしろ彼女の反応こそが自然であるのかもしれないと思えるようになってきた。 そういえば、初期のセンター・生駒里奈もデビュー当初はよく泣いていたり、会見を逃亡したりしていたらしいので、やはり大園桃子の反応こそ自然なものであるのかもしれない。 大園桃子が嫌いだった。 けれど、先日の『乃木坂46SHOW』で歌い踊る彼女の姿はとても魅力的だった。 NOGIBINGO!8でも笑顔で映る時間が増え、NOGIRoomでも楽しそうにしている。 乃木坂46を知らなかった彼女は、乃木坂46の中で新しい夢を見るのだろう。傷つきながら、涙しながら、真の強さを探しながら。 ぼくはもう、大園桃子が嫌いではない。