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鈴江信彦
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[暗殺]柴田哲孝 著 幻冬舎 まず、僕の個人的体験から書く。約二十年前、僕の友人がある事件に巻き込まれ、死んた。警察は事故死として処理したが、僕はその時から今現在に至るまでずっと、彼は殺されたのだと信じている。僕がいくら彼は殺されたのだと主張しようが、事実がどうであろうが、彼は公的には事故死したのだ。 この作品において元首相が殺害されたということは紛れもない事実だ。しかし、元首相を死に至らしめた真実は必ずしも一つであるとは限らない。真実は一つであるはずだ、というのは虚妄であり、思い込みに過ぎない。それが作者がこの作品で提示する懐疑であり、諦念でもあったのではないか。 読み終えたからといって、万人が納得出来るネタバレが決してなされることのない作品。読んだ人間にはそれぞれの真実がある。事実は元首相が殺されたという一点のみ。 読み手の心理と性格、年齢や知識によって何通りもの解釈、真実がある作品だと感じた。 だからこそなのか、やはりどうしても気になるのだ。結局、犯人は誰だったのか。事実はどうだったのか。 そして、ロサンゼルス国際空港に降り立ったシャドウの次の標的は何なのか。

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