5日目【高山、与田、白石、衛藤、桜井、若月】
私は前日に処刑されゲームから外れた。通称・霊界からこのゲームを覗き、人狼チームの勝利を願うことしかできない。
夜。高山さんと与田ちゃんは、騎士の西野さんを噛んだ。妥当な判断ではあったが、私を信用していた西野さんを噛むのがどう出るか。連続ガードができない白石さんの方が良かったのではないか。それとも秘策があるのか…。
朝。死んだ私を信じるかどうかの議論が行われた。
ここで視点を整理する。
私に人狼だと言われている若月さんは、私を人狼だと推理している。そうすると…
①堀に人狼だと言われた与田は人間
②騎士に守られた白石は人間
③堀の対抗である生田は本物の占い師、よってその生田が人間だと言っていた桜井は人間
となる。残りメンバーは、高山、衛藤。つまり、若月さん目線、今日、高山さんか衛藤さんのどちらかを吊らないと、負けになる。
そう「勘違い」させられている。私が残した結果が、そうさせている。
「若月的には、私とミサミサが人狼だよね?」
「そうなる」
高山さんが若月さんに誘導をかける。
「私が人狼?じゃあ若月と与田ちゃんが人狼だ」
衛藤さんもその流れに抗えない。
「堀さんは偽物だから、私と若月さんが手を組むしかないです!」
与田ちゃんがさらに拍車をかける。
「たしかに。どっちのチームが信じられるか、タッグ戦だね」
若月さんも改めてその構図を確認した。
こうして若月さんは与田ちゃんと、高山さんは衛藤さんとチームを組む形となった。しかし、これは人狼の巧妙な罠。各チームに人狼が1人ずつ入り込んでいる。私の与田ちゃん狼占いが、状況を混乱させていた。
そして残された白石さんと桜井さん。白石さんは、騎士に守られていることから誰の目から見ても人間。
そして、視点が漏れてはいけないのが、桜井さんも同じく誰から見ても人間ということだ。
この村の占い師候補は2人。生ちゃんは桜井さんを占って人間と見ている。一方私は、桃ちゃん、与田ちゃん、若月さんを人狼と見ている(という嘘をついている)。人狼は3匹。つまり、残りの人は全員人間となり、桜井さんも人間となる。
桜井さんは両方の占い師から人間と言われている。いわゆる「確白」なのだ。
この2人の票がどう動くかが、勝敗を決めることになる。
「私は与田ちゃんと若月が人狼だと思う。まいやんは?」
「うーん…」
桜井さんの問いかけに、一点を見つめ言葉をなかなか返さない白石さん。このまま流されてくれれば…
「私、与田ちゃんは狼だと思う。でも、若月が狼に見えない」
白石さんは、この状況では考えにくい、でも真実と寸分違わない推理を展開し始めた。
「どうして?未央奈は偽物?だとしたら与田ちゃんも人間になるんじゃない?」
「狂人誤爆がある」
狂人誤爆。占い師を騙った狂人が、間違って人狼に、人狼出しをしてしまうこと。
「未央奈が狂人で生ちゃんが真の占い師。生駒が人狼で、桃ちゃんが真の霊媒師。だとしたら、与田ちゃんが人狼だけど、若月は人間の可能性がある」
白石さんは冷静だった。村の流れに反して、ひとりで持論を展開し続けていた。
「まってまって」
笑顔で高山さんが割って入る。
「私が人狼じゃないから言えることなんだけど、そうするとラストウルフはミサミサになるよね。でもさ、初日に与田ちゃんとミサミサが処刑対象になった日に、2人ともが騙らずに潜伏することってあるかな?それにさ、未央奈が狂人だとしたら、生ちゃんに3票入った時点で対抗するのは危ないよ。だって生ちゃんは人狼だったのかもしれないんだよ?ご主人様を殺すかもしれない票を、狂人は入れられないよ。だから未央奈が本物。そうじゃない?」
完璧な弁論だった。メンバー1のキャリアの長さで一目置かれている存在だった高山さんが、ここまで潜伏していたのは、この理論があったからだ。私のトリッキーな動きを、一瞬で理解した上で、このハイレベルな議論展開。頼りになる先輩の背中を、私は見守った。
「筋は通ってる。それが真実である可能性も高い。…ある可能性を除いたら」
白石さんが、すべてを聞き終えた後で、ぽつりと語った。
「何?ある可能性って?」
笑顔を崩さずに質問を返す高山さんに、ようやく伏せていた視線をあげた白石さんが、目を合わせて、こう言った。
「与田ちゃんとかずみんが人狼の場合だよ」
(つづく)
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