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なしでは生きられない自分」を発見する。彼自身も一時は作家を目指し、習作も書いた。が、中上のように激しい表現欲を自分の中に見出せず、編集者として関わることを決意する。  彼のずば抜けた嗅覚は、角川書店時代に大きく開花した。社内一のベストセラー男だったし、彼が編集した作品のうち五作が直木賞に選ばれているのだ。そのタイトルと作家名を並べれば、見城の人脈の一端がうかがえる。  村松友視『時代屋の女房』。つかこうへい『蒲田行進曲』。山田詠美『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』。景山民夫『遠い海から来たCoo』。林真理子『最終便に間に合えば』。  この時代、喧嘩と借金で彩られていた盟友、中上の気ままな足跡に、見城は懸命に併走していた。酒場での乱闘で相手に怪我をさせた時は、まだ取れるかどうかも分からない芥川賞の賞金で返すから、示談金三十万円を貸せと頼まれる。もう戻らないと観念して貸したが、何と本当に『岬』が受賞してしまった。  早速、賞金三十万円と受賞第一作『荒神』が見城の元へ持参される。ところが、角川から帰る間際、中上は見城に渡した札束から一枚抜き取り、「タクシー代、貸せよ」と持っていってしまった。この一万円は、中上に貸した中で、もっとも印象に残る、「戻ってこないことがうれしい」金となったのである。 「彼は聖なる天使の部分と、卑しい悪魔の部分と両方持っていた。そしてそんな自分への激しい自己嫌悪もきちんと持ち続けた作家だった」  中上が故郷の和歌山県新宮市で「被差別部落解放講座」をやりたいと言い出した時は、金を都合して手作りの講座を実現させもした。彼の欲するものは、可能な限り叶えてやろう。そんな心情は「いつか百分の一、仕事で取り戻せればいい」という駆け引き感覚以上に、中上の才能と、自分には出来なかった「社会の底を突き破る」破天荒な生き方に惚れ込んでいたからだ。  もっとも感受性の強い二十代の日々を中上と共有した影響が少なかろうはずがない。ピュアな聖性と卑性が同居し、せめぎあうアンビバレンツな中上の生き方は、見城自身の持っていた資質をさらに自覚的に強化する役割を果たしたのだ。  作家と感動を共有するというのは、へんのもっとも大切な仕事である。どの時代も見城は才能を見込んだ作家には、とことんつきあってきた。 『コインロッカー・ベイビーズ』を執筆していた村上龍がスランプに陥った時は、毎晩十二時きっちりに自宅の電話が鳴った。一時間、彼を励まし、受話器を置いた途端、今度は宮本輝からの定期便。二時になると酒に酔った中上健次がくだを巻いてエンドレスで喋り続ける。 幻冬舎の皮切りの六冊は 印刷製作費も広告費も すべて半年後の手形払い 「僕は彼らの精神安定剤。時には相手の傷口に塩をすりつけて、その痛みで書かせることも編集者の仕事なんだよね」  が、三十代後半で「月刊カドカワ」の編集長となり、取締役に名を連ねるようになると、自分の安定しているポジションに嫌悪を抱きはじめた。角川というブランドの力や安全・・・・・・。確かに居心地はいい。が、地位が上がるにつれめんどな相手には会わなくなり、リスクを背負う必要もなくなる。かつて中上と激論していた頃のハングリーさは、どこにも見つからない。 「自分が腐ってると思った。二回、辞表を出したけど、春樹さんがいたからやめられなかったんだ。スイングの大きいチャーミングな人だったし、コカイン事件がなかったら、いまも角川にいたと思う」  九三年、春樹社長がコカイン密輸で逮捕された。取締役会が全員一致で社長に辞任要求を出したが、見城は「彼の下で仕事を学んだ自分も、辞表を出さなければ筋が通らない」と社を辞める決心をする。  三ヵ月後、一緒に辞めた部下、石原正康や小玉圭太ら六人と出版社・幻冬舎を設立。名付け親は角川時代、二十五通目の恋文で念願の出会いを果たした五木寛之だった。  皮切りの六冊の収益が入ってくるのは半年後、印刷製作費も、四千万円近い新聞の全面広告費用も、すべて半年後の手形払いにしてもらった。 「圧倒的に不利な後発社が世に出て行くには、『安全』と言われても仕方ない。非常識だと批判されるぐらいのことをやらなきゃ」  確かにこれが一般企業のスタートなら、かなり危ない綱渡りだろう。が、五木寛之、北方謙三、村上龍、山田詠美、吉本ばなな、篠山紀信という強力なラインアップに、リスクを感じる取引先は少ないはずだ。

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NeBuindesuwA R.“8”mura
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  • ホワイト
    ホワイト

    ミナミの近くに、美味しい馬肉料理屋さんがあったんです。

    嗚呼、こんな時間にまたもお腹が・・・・・・

    ( 。-_-。 ) hungry

  • ホワイト
    ホワイト

    見城さん、「齊藤」ではなく「齋藤」飛鳥さんなんです。

    乃木坂46の1期生には他に、「斎藤」ちはるさん、「斉藤」優里さんがいて、日向坂46の1期生には「齊藤」京子さんがいるんです。
    なんと4種の「サイトウ」さんが!!

    だからなんだっつったら、そんだけのこと、というお話。

    ( 。・_・。 ) ⊿

  • ホワイト
    ホワイト
    吉田真悟
    先程は不躾ですみませんでした。吉田と申します。私の部屋に足跡がついていたものですから、勝手に事情をご存知かと勘違いしてしまいました。ただ今見城先生の部屋のウォッチ数を増やしてランキングを上げることを40人程で実施しております。つきましてはホワイトさんにも是非ご参加頂きたくお願いに参上いたしました。ご検討下さい。m(__)m

    これほどに居丈高で上から目線の謝罪もどきからはじまる文章を、一応は最後まで読みました。
    文全体から溢れ出す「偉そう」な感じは、私には不快極まりありません。
    「関わらないで」と繰り返すのは、これで三度目です。

    御理解ください。

  • ホワイト
    ホワイト

    謝罪には、最悪でも「申し訳ない」とこのように使うのが、当たり前です。
    この文章を吉田さんに読まれないことが、本当の私の願いなんです。

    見城さん、引用して勝手に使って、ごめんね(←オイ)。

    ( 。-_-。 ) sorry

  • ホワイト
    ホワイト

    近くの公園の草毟り、無事に終了。

    ご近所のマダムス、たわいもない話に花が咲く。
    そして、やはり、新型コロナウイルスの話題も。
    「なるべく」レベルだけれど気をつけましょう、と。

    平和な春。

    公園に子供がよく来てくれる。

    ( 。・_・。 ) spring