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吉田真悟
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No.524 『いのちの停車場』 南杏子著 (2021/04/10 幻冬舎文庫) 2021/05/13(5/7読了) 5月21日に吉永小百合さん主演で映画が公開されます。その公開を待てずに昨年11月18日急性大動脈解離のため映画の打ち合わせ中に亡くなられた東映岡田会長の話もお聞きしていたため、このタイミングで読みました。 大学病院の救命救急センターに長年勤務していた主人公の白石咲和子(62歳)はとある責任をとり退職し故郷の金沢に戻ることに。知り合いの診療所を手伝い訪問診療医になり、いろいろな患者の事情に翻弄されながらも奮闘し、最後は自分の父親の積極的安楽死に関わる決意をしたところで....問題を投げかけて終わってしまうという話でした。 診療所の面々と 老々介護の夫婦、頸椎損傷となったIT社長、末期癌の官僚とその妻、腎腫瘍の幼い娘とその両親らとの悲喜こもごもの真剣な遣り取りがあり、誰にも間近に迫っている避けられない現実と向き合う覚悟を促す、妙に心に沁みる本でした。 特に5章の「人魚の願い」で余命幾ばくもない少女が初めて見た海(千里浜なぎさドライブウェイ)で両親に告げる言葉で涙腺が崩壊してしまいました。これはずるい。 最終章の実父の安楽死への関わり方には賛否が有るでしょうが、私は尊厳死全般は認められるべきと思います。もっと問題を炙り出して突っ込んで書いて欲しかったです。 他人事には思えず珍しく真剣に読ませてもらいました。 肉親が目の前で死んでいく姿にどう向き合えば良いのか? 看取られる側はどうしたら良いのか? 悲しめば良いのか? 諦めれば良いのか? 希望は? 病院で死ぬか? 自宅で看取るか? などの答えをじっくり考えている暇はないなぁ。 しかし、主人公の女医さんの顔が吉永小百合さんにならずに苦労しました。映画を観たら変わるかもしれませんね。 【登場人物】 白石咲和子:62歳、救命救急医をやめて故郷の金沢に戻り在宅専門医療を手伝う事に 白石達郎:咲和子の父:87歳 仙川徹:まほろば診療所二代目 玉置亮子:事務員 星野麻世:看護師29歳 野呂聖二:咲和子がいた病院のバイト事務員、医師国家試験受験予定 柳瀬尚也:バーテンダー 並木シズ:患者 並木徳三郎:シズの夫 江ノ原一誠:IT企業社長、40歳、頸髄損傷、四股麻痺 静香:江ノ原の妻 大槻千代:78歳、ごみ屋敷の住人 小崎尚子:千代の娘 宮嶋一義:エリート官僚、膵臓癌。 友里惠:宮嶋の妻 大樹:宮嶋の息子 若林萌:6歳、腎腫瘍 【引いた言葉】 下顎呼吸とは・・・ 下顎呼吸(かがくこきゅう)とは、終末期や意識障害における呼吸困難の症状として認められる呼吸である。下顎を上下させ、口をパクパクさせてあえぐような努力性の呼吸で、呼吸中枢の機能をほぼ失った状態でみられる。死期が近づいている徴候の一つとされている。 せん妄とは、身体疾患や薬の影響で、一時的に意識障害や認知機能の低下が起こることを指します。周囲の状況がわからなくなる、幻覚、妄想などの症状をきたします。 「めった汁」とは、さつまいもや大根、人参といった根菜類を使った具だくさんの豚汁のこと。従来の豚汁と異なるのは、じゃがいもではなくさつまいもを使う点にある。
ユニークな名の由来は「やたらめったら具を入れる」「やたらめったら具を切る」など、諸説伝わっている。たくさんの具を使うのは、農家が大量にとれた野菜を処理するためにはじめたともいわれている。 褥瘡(じょくそう)とは、一般にいう、床ずれのことです。 皮膚の表面には毛細血管が走っていて、その血流によって皮膚には栄養が与えられています。 体の一部に持続的に力がかかると、表面を走る毛細血管が圧迫され、皮膚への血流が乏しくなり、その部分の皮膚が死んでしまいます。 この状態を虚血性壊死といいます。

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千冊回峰行中!
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    No.725
    『汝、星の如く』
    凪良ゆう著
    (2022/8/4 講談社)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/8に視聴

    凪良ゆうさんの本は2冊目。
    愛媛のとある島出身の同級生の男女の長い長い切ない話。
    一人は漫画の脚本家として成功し、もう一人は刺繍工芸家として成功するが、
    そのタイミングがずれて、哀しい物語となるが、最後は納得してしまう。
    凪良ゆうの親ガチャ第二弾。どちらも思っていた以上に面白かったが、こちらの方が私的には好きだな。複雑な家庭の複雑な人たちが細部までしっかりと描かれていて実際にいそうだなと思った。

  • 吉田真悟
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    No.726
    『アリアドネの声』井上真偽著
    (2023/6/21 幻冬舎)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/9に視聴

    地下深くからの災害救助の物語。
    ただし、要救助者は三重苦(話せない、見えない、聞こえない)の障害者であった。
    ドローンを使った救助劇のラストで、ある疑惑が晴れる時になるほどと膝を打つ。
    ハラハラドキドキ。でも近未来的で身近に感じられず、それほどのめり込めなかった。

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    No.727
    『同志少女よ、敵を撃て』
    逢坂冬馬著
    (2021/11/17 早川書房)

    202404/01
    ※Amazon Audibleで3/10に視聴

    異色すぎてぶっ飛んだ。
    第二次世界大戦下の独ソ戦を舞台に、女性狙撃隊員の過酷な現場を描いてるのだがリアルすぎて、ハラハラドキドキの連続でのめり込んでしまった。
    当時の心に刺さる人間同士のやりとりを何故日本人が小説にできたのか?
    著者の筆力に引き付けらる。忘れられない本となった。

  • 吉田真悟
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    No.728
    『ある男』
     平野啓一郎著
    (2018/9/28 文藝春秋)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/12に視聴

    林業に携るある男が木の下敷きになって死んだ。
    しかしその男の兄が死んだのは弟ではないと言い放つ。サスペンス仕立てでその男が誰なのか、徐々に明らかになっていく過程で唸るし、驚愕の結末に。

    平野啓一郎さんって理屈っぽくて、傲慢な物言いで生理的に合わなかったのだが、全ての登場人物が良く描かれていて面白かった。戸籍交換のトリックも面白い。本を買い、映画も観てみようと思う。

  • 吉田真悟
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    No.729
    『悪人』
    吉田修一著
    (2007/4/6 朝日新聞社)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/14に視聴

    映画はまだ観てないが、妻夫木聡、深津絵里らの映画キャストを知っていた。
    全くこの原作からは想像できない俳優のチョイスだと思った。

    抑圧されている人たちの殺人事件の話で、犯人はだれで、なぜ?が後半まで引き延ばされて気持ち悪くなっていく。
    話が冗長と思うが、ラストの逃避行(対幻想)や供述まで結論が解らず、やきもきとするのだが、最後は胸熱となり思ったよりは良かった。本を読み終えた現在では映画にあまり興味が涌かない。😅

  • 吉田真悟
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    No.730
    『紙の月』
    角田光代著
    (2014/9/13 角川春樹事務所)

    2024/04/01
    ※Amazon Audibleで3/17に視聴

    男に溺れ、金や見栄に溺れ、堕ちて逃げた主人公を関係者の証言でプロットしてあぶりだしていく。
    徐々に不協和音が広がり、そういう可能性が自分にもあると思わせる恐怖を感じた。とても怖い本。
    最終的には犯人は捕まらない、そこが?ではあるが、映画で主演の宮沢りえさんの顔がちらついた。
    妖艶なシーンはあるのか?映画で確認しよう。

  • 吉田真悟
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    No.731
    映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

    2024/04/05
    (3/18 U-Nextで鑑映)
    シェフである父とSNSに詳しい息子とシェフの元部下の3人の愉快な料理ロードムービーでした。
    美味しそうな食べ物が沢山出てくるなか、キューバサンドなるものを是非食べてみたくなった。
    (空腹時に観てはいけない)
    父子の微妙な関係のなか、息子(パーシー)が可愛くて、自分の息子の少年時代を思い出してしまった。

    シェフとブロガーとのやりとりが結局ハッピーエンドに終わり、妬ましくなるが、ダスティン・ホフマンが頭の固いレストランのオーナー役なのは、勿体ないよね?

    登場人物:
    カール(シェフ)
    パーシー(カールの息子)
    マーティン(カールの友人、元部下)
    イネス(裕福なカールの元妻)
    ラムジー(料理評論ブロガー)

  • 吉田真悟
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    No.732 
    『アメリカン・アンダードッグ』

    2024/04/25
    (3/19 AmazonPrimeで鑑映)

    NFLのレジェンドクォーターバック、カート・ワーナーのサクセスストーリィ(実話)である。

    冒頭、大好きなサンフランシスコ49ersのQB、ジョー・モンタナの活躍映像が映り胸熱となる。
    そのジョー・モンタナに憧れるカート・ワーナー少年がQBの練習を開始するシーンからこの伝説は始まる。

    後半は大体ついていけるが、前半を観ていて、こんなにも苦労をしていたのかと驚く。いやはや大変な男だと再認識した。

    3回観て3回とも同じ所で泣いてしまった。
    常にフットボールの成績で自分を証明し続けた男が、バツイチで二人の子持ち(さらに長男は視覚障害者)のブレンダに求婚するシーンでである。
    また目の不自由な息子のザックの演技がさらに泣かせてくれる。
    この時点でカート・ワーナーは本当に欲しいものを手に入れ、勝者足りえたのである。その後は神様からの彼へのご褒美みたいなもので華々しい。
    アリーナフットボールで活躍し、NFLのラムズのスカウトの目に止まり、トライアウトを経て、控えのQBとして契約する。
    アンダー・ドッグとは、「咬ませ犬」という意味である。「運命はアンダー・ドッグに味方するんだ、それを一緒に証明しよう」とラビット関根に似たヘッドコーチに諭される所で血がたぎる。
    その後、エースQBが怪我したため急遽、正QBとしてスーパーボウルチャンピオンにまで駆け上がる。
    シーズンMVP、スーパーボウルMVPを受賞し後に殿堂入りする。

    エンドロールの最後の最後まで観るとブレンダと7人の子供を生し、ザックともども幸せに暮らす映像が流れ温かい気持ちに溢れる。なんてこった、堪らない映画である。是非ご覧あれ。

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    No.733 
    『八日目の蝉』角田光代著
    (2007/3/25 中央公論新社)

    2024/05/14 
    (Amazon Audibleで3/19視聴)

    不倫相手の子供を衝動的に盗み出し、数年も連れ回す主人公に徐々に情が移っていくが、いつ捕まるのかと緊張感がずっと続いた。

    母親ごっごに付き合わされるが、決して不快ではない。子を守る母親として主人公の「希和子」になりきり、行く先々で世話してくれる他人の人情に触れ、逃亡生活をハラハラしながら追っかけて、最後は誘拐が発覚して捕まってしまい一旦ホットするも、今度は「薫」(子供)の目線でその後の第二章が始まる。希和子と同じような不倫をしてしまう薫に、またかといった諦めを感じる。

    希和子と薫の最後のすれ違いについても、やきもきしつつ諦めてしまう。
    そこで出会ったなら、お互いを十分に理解できただろうかな?