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吉田真悟
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No.546 『二人の嘘』  一雫(ひとしずく)ライオン著  (2021/06/25 幻冬舎)  ※ブックデザイン:   鈴木成一デザイン室 2021/07/16(7/15読了)  美人判事、嘘、障害致死、虐待、告解、神の不在、絶望、再審、純愛、逃避行、悲劇と読み終わって思い浮かぶ単語を並べていると、苦しくて何度も本を閉じてしまい十日も経ってしまっていた事に驚いた。  東大法学部を首席で卒業し在学中に司法試験をトップ合格し裁判官となった片陵(かたおか)礼子。「感情を持つことはすべてを狂わせる」と冷静に職務を全うしてきたが、10年前に傷害致死により実刑判決を下した蛭間隆也が「門前の人」として現れる。明らかになっていく真実、礼子と蛭間兄妹の出自が悲しくてやるせない。似通った境遇の礼子と蛭間の禁断の逢瀬が嘘がとても微笑ましくも悲しかった。真犯人に対する怒りで胸が張り裂けそうになり、被害者達への同情から涙が止まらなかった。  物語の最後をハッピーエンドにする事が作家の能力だとつかこうへい氏は書いていたが、この小説には神は居ない。一人、礼子だけが本当の自分の人生を歩き出すために、皆の受難があったとしか思えない。それでも希望を感じる最後であったが。  著者の本は初めて読んだ。一体何者だろうか?引き込まれる筆力、特に法曹界の事が詳し過ぎる。不完全な人が人を裁き、被告から犯罪者になり人生を狂す。淡々と事務的に進む法廷内のお作法やら裁判官の実態に不安を覚える。判事には常に自分を裁ける人になって欲しい。それはもう人を超えた神の領域だろうが。 最後に私が著者を裁く。 「---主文。被告一雫ライオンを懲役十年に処する。」 可愛いい盛りの子供達に善良な者達になんて酷いことをするんだ。悪魔の所業を許し、脳無しの神を殺した罪だ。 【登場人物】 片陵礼子(かたおかれいこ):東京地方裁判所判事、33歳 片陵貴志:礼子の夫、弁護士、40歳 蛭間隆也:傷害致死罪で懲役4年に 蛭間奈緒: 蛭間隆也の妹 岸和田美沙:最高裁広報課付 内山瑛人:東京地裁刑事第十二部判事補 小森谷徹:同上の部長 雨野智巳:東京地方裁判所長 長野判事:礼子の先輩判事 守沢瑠花:礼子の同期、新聞記者 香山季子:礼子の叔母、72歳 山路昭正:蛭間の弁護人 今張千草:聖森林の里鰐淵園長 【引いた言葉】 合議審(ごうぎしん)とは、裁判所において3名以上の裁判官等が合議体による裁判(審理・判決など)を行うこと。これに対し、裁判官が単独(1人だけ)で裁判(審理・判決など)を行うことを単独審と呼ぶ。 裁判員制度導入後の有罪率は99.6%と変わらず高い 「検察に起訴されてしまえば、有罪。」 正当防衛 過剰防衛 刑事訴訟法351条 検察官又は被告人は、上訴をすることができる。 第266条第2号の規定により裁判所の審判に付された事件と他の事件とか併合して審判され、一個の裁判があった場合には、第268条第2項の規定により検察官の職務を行う弁護士及び当該他の事件の検察官は、その裁判に対し各々独立して上訴をすることができる。 情状証人とは? 情状証人とは、刑事事件の裁判で、被告人の刑が少しでも軽くなるよう、被告人の人となりや生活状況、今後の更生に向けてどのようにサポートしていくのか等について証言する証人のことです。 ディバィダ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ディバイダ 燥いだ(はしゃいだ) マージナル‐マン【marginal man】 文化の異なる複数の集団に属し、そのいずれにも完全には所属することができず、それぞれの集団の境界にいる人。境界人。周辺人。

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  • 吉田真悟
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    No.733 
    『八日目の蝉』角田光代著
    (2007/3/25 中央公論新社)

    2024/05/14 
    (Amazon Audibleで3/19視聴)

    不倫相手の子供を衝動的に盗み出し、数年も連れ回す主人公に徐々に情が移っていくが、いつ捕まるのかと緊張感がずっと続いた。

    母親ごっごに付き合わされるが、決して不快ではない。子を守る母親として主人公の「希和子」になりきり、行く先々で世話してくれる他人の人情に触れ、逃亡生活をハラハラしながら追っかけて、最後は誘拐が発覚して捕まってしまい一旦ホットするも、今度は「薫」(子供)の目線でその後の第二章が始まる。希和子と同じような不倫をしてしまう薫に、またかといった諦めを感じる。

    希和子と薫の最後のすれ違いについても、やきもきしつつ諦めてしまう。
    そこで出会ったなら、お互いを十分に理解できただろうかな?

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    No.734
    『キングスマン ファースト・エージェント』
    『キングスマン』
    『キングスマン ゴールデン・サークル』
    3作品、3/20に観覧終了(Amazon Prime Video)

    本気で作った紳士の国の映画だった。
    何度も観たが、痛快で面白い。金をかけているのがよくわかる。
    そして人が簡単に死ぬため罪悪感がない。そこが良い。

    「ファーストエージェント」
    1914年当時(どこまでが本当か私にはわからないが)
    凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公が、
    英国国王ジョージ5世の協力の下、高級テーラー内に国家権力から独立した諜報機関「Kingsman」を作る話。

    ・イギリス国王のジョージ5世、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世、ロシア皇帝のニコライ2世がいとこ同士だったとは知らなかった。
    ・「羊飼い」を名乗る謎の男が世界を混乱させるべく秘密会議を開いていたが、ロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイマタ・ハリ、ロシアの革命家レーニンといったそうそうたる歴史上の人物が登場する。後に世界を震撼させるキーパーソンたち。なのでなかなか、スケールの大きい時代がかったスパイアクション映画となっている。

    「キングスマン」
    キングスマンのメンバーの一人が冒頭で死んでしまい、その後任を危険な試験で選抜する。かつて自分の父がメンバーだったエグジーがもう一人の女性と選ばれるが、スマホを使い世界中を暴力的に洗脳する悪と戦うといった超アクション大作である。杖や傘などの独特の武器や防御アイテムが面白い。エグジーの成長と義理の父親との対決に鳥肌がたった。少年が一人前の大人にいきなりなってしまい、まぶしいのである。

    「ゴールデン・サークル」
    麻薬密売組織ゴールデン・サークルの女ボスとの闘いがメインのストーリィ。
    麻薬に仕込んだ毒物により世界中がパニックになるが、すんでところで解毒剤を手に入れて世界を救うというお話。
    米国諜報組織ステイツマンとキングスマンの関係(バーボンやテキーラって太陽に吠えろか?)が近いのか遠いのかいまいちわからなかった。親しい仲間の死がさらっとしていて心に沁みた。

    新作が出たら必ず観るよ。

  • 吉田真悟
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    No.735
    『変な家』 雨穴著(2021/07/22 飛鳥新社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ホラー・サスペンス。
    緻密にデザインされたディテールは凄いの一言。
    本当に怖くなり鳥肌が何度も立ったが、引き寄せられて先を読みたくなる。
    中毒性がある本である。夜に一人では読まない方が良いな。おしっこ漏らしそうだから、映画は観ない(^^)/

  • 吉田真悟
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    No.736
    『変な絵』 雨穴著
    (2022/10/20 双葉社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ばらばらの不気味な話がどう合体していくのか?
    結末を知りたいのだが、恐ろしいし、不気味だし、躊躇しながら先を読んでしまう。一体誰が主人公?犯人?被害者?いびつな絵の意味が分かってくると恐怖が何倍にも膨れ上がる。
    最終章でやっと最初の絵の意味が分かり、主人公が分かって全部つながった。
    どえれー怖かった。
    夏にぴったりの本。

  • 吉田真悟
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    No.737
    『吉原手引草』 
    松井今朝子著
    (2007/3/1 幻冬舎)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/23に視聴) 
    身請けが決まった遊女・葛城が、幸福の絶頂に突然失踪する。多くの人のインタビュー(3人称多視点)でその事実が明らかになっていく。
    どうも、仇討ちが隠れているし、人情噺でもある。
    よくある形式だが、書くのは大変であろうと思う。
    いきさつを忘れてこの文章を今、書いている。はぁ。

    第137回直木賞受賞作と聞いて気になって古本屋で買った。大変面白かった。

  • 吉田真悟
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    No.738
    『夜と霧』
    ヴィクトール・E・フランクル著(2002/11/06 みすず書房)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/24に視聴) 
    極限の恐怖でも生還することが分かっていたからなんとか読めたがきつい本だ。
    人間の尊厳やプライドが粉々になったとき、人は何をしだすのか?
    人類全体の負の貴重な体験記録である。子孫に語り継がなくてはならないと思った。
    今日石で追われた人達が明日は別の民を蹂躙する。
    今、ガザで起きていることはこの本とは全く関係ないと思おう。人類の進歩はいつまで止まったままだろう。共通の敵が現れない限り、その連鎖は繰り返すのだろうなぁ。愚かなり

  • 吉田真悟
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    No.739
    『読書という荒野』
    見城徹著
    (2020/04/03 幻冬舎文庫) 

    2024/07/02 (Amazon Audibleで3/25に視聴) 
    読んだはずなのに覚えていないことだらけで愕然とする。見城先生のお祖父様は森鴎外の友人で高名な医者だったそうだ。今更知る驚愕の事実。多分忘れただけなのだが。

    いったん読むと、とんでもなく読みたい本が増えてしまう。いや、前回もピックアップしたはずだが、怠慢である。『罪と罰』、『邪宗門』から読んでみるか。

    そうすると『仮面の告白』、『豊穣の海』、『金閣寺』などはいつになったら読めるのだろうかな。細かく読書計画を立てなくてはならないなぁ。早く読めよ自分!

    読書が荒野になる日まで精進しよう