ログイン
詳細
吉田真悟
投稿画像

No.587 『腎臓が寿命を決める』  黒尾誠著 (2022/01/25 幻冬舎新書)GSNo.642 2022/01/30 背中の腎臓の辺りが疼きっぱなしで、そこいらのホラー小説より怖かった。まだ、ドキドキも止まらない。 纏めると帯に書いている箇条書きの通りとなるのだが、本を読まないとその意味が分からない。 長生きしたけりゃ買って読めよ。 沢山のことが、文字通り腑に落ちた。 著者は腎臓とリンの関係から老化の仕組みを解明する研究を続けている方。またJAXAと宇宙の無重力状態に滞在した飛行士の筋肉や骨の量の減少具合も共同研究している。 <なぜ寿命を腎臓とリンが決めるのか?> 腎臓は肝臓と同様、肝腎かなめの沈黙の臓器である。血液を濾過し必要なものを再吸収し、不要なものは尿中に排出し体内環境を一定に保っている。血圧、血中塩分、血中酸素濃度、血中リン濃度、造血ホルモンの分泌など司るため、各臓器とのネットワークの中心に位置する。一日に180Lもの血液が濾過され、1.8Lが尿として排泄され続けている。 この腎臓の濾過能力はネフロン(糸球体、尿細管のセット)数で決まるらしい。個体差はあるが(生まれた時の体重で決まる)20歳のころには両方の腎臓で約200万個あるそうだが、この数が加齢により減少し、60歳過ぎには20歳の頃の約半分以下となってしまうそうだ。 10万個(5%)以下になると人工透析が必要となる。(慢性腎臓病の末期で高リン血症の状態) 現在、全国で約30万人が人工透析を受け、この数が毎年1万人のペースで増えているらしい。透析は週3回(1回4~5時間)クリニックで血液の浄化を行うが強い疲労感を伴う。 これを一生涯続けなくてはならない事になる。つまり減った濾過能力(ネフロン数)は元に戻らない。 日本の全医療費の約2割が慢性腎臓病に消費されているのだとさ。(怖いな) では <何がネフロン数を減らすのか?> 著者はリン、特にCPP(リン酸カルシウムがタンパク質と結合してコロイド粒子となった)を治療標的として上げている。血中や尿中にリンが漏れ出た場合、細胞毒となり色々な病気を引き起こすことが分ったそうである。そもそも、骨の成分がリンとカルシウムが結合したリン酸カルシウムで体内ではどこでも作れる様に過飽和な状態となっている。これは人類が進化の過程で脊椎動物として骨を手に入れ陸上に上がった時に、リンを制御するシステムと共に、CPPが毒となり老化を進めてしまうリスクも宿命として受け入れたものなんだと。 リンやCPPに引き起こされる主な病気は、動脈硬化、脳卒中、狭心症、心筋梗塞など石灰化による成人病などである。 治療としては以下の3点がある。 ①リン濃度を下げる ②リン酸カルシウムの析出(結晶化)を防ぐ ③CPPの形成を抑える では <リンの体外への排出メカニズムは?> 骨にあるFGF23というホルモンがリンを排出する必要を腎臓に知らせて、腎臓にあるクロトー遺伝子がこれを受取りFGF23が信号を出す限り排出を続けるらしい。病気の末期にはFGF23は増え続ける事になる。 FGF23の分泌量が53pg/ml(ピコグラム・パー・ミリリットル)以上だと黄色信号で、このあと5年も経つと人工透析のやっかいになるのだそうだ。 <こうならないためには?> ①リン濃度を下げる ⇒リン吸着薬を使い体内への吸収を防ぐ。しかし高リン血症(つまり手遅れの状態)でしか保険適用とされない。 ②リン酸カルシウムの析出(結晶化)を防ぐ ③CPPの形成を抑える ⇒骨粗しょう症の薬があるのだが慢性腎臓病への適用はこちらも保険適用外となってしまう。 ※既存薬の保険適用枠の拡大のための治験には数十億円が必要で、国からも研究費がつきにくく、製薬会社も利潤が薄いため重い腰を上げないのだそうだ。(昨今のイベルメクチンと同じ状況)でもこの本がバカ売れしたら、頭の固い役人や政治家も動き出すのではないだろうか。   <結局、長生きするために必要な事> その1(腎臓のネフロンを減らさない) 食事、特に食品添加物に含まれる「無機リン」を制限する。 ※食品添加物に注意:酸味料、香料、乳化剤、PH調整剤、結着剤、強化剤... ※回数を検討:スーパーやコンビニのお惣菜、弁当、外食系ファストフードいわゆるジャンクフード、スナック菓子、肉や乳製品…… その2(骨量を減らさない) 骨に負荷を掛ける運動を実施し骨の量を保ち、リンの血中への溶出を避ける。 ※最低、30分に1回は席を立ち社内を徘徊しよう。それと自重トレーニングも考えよう。 <感謝に代えて> いつもながらナイスなタイミングで出版して頂いた。幻冬舎の本にはいつも助けられている。天啓の如く読めと声が聞こえたな。 数年前に、肩が炎症を起こして上がらなかった時、接骨院でレントゲンを見せられ、石灰化したツブツブが肩の骨の表面に出来ていて「これが原因です。加齢のためです。」と言われた事を思い出した。「加齢って何だよ」と痛い注射の後でカレーをやけ食いした事を思い出した。 運動不足でCPPが血中に溢れていたかもしれない。レバーやジャンクフードを食べ過ぎてリンを大量に摂取していたかもとしれないと今なら反省会が出来る。 コンビニの惣菜やつまみが大好きなんだよ。ワインはどれくらいに制限すべきか?素性のわかる食材で料理したものにシフトしないとな。骨が軋むような運動もしよう....。 人工透析の厄介にはなりたくないと、力なく胆に銘じておく。(キモいな) 幻冬舎とこの本を手に取るきっかけを作ってくれた友人と我が腎臓に幸あれ 【帯より】 ●腎臓はすべての臓器を管理。 パソコンのOSのような存在。 ●若く見える人は、みな腎臓の機能が高い。 ● 「なんとなく不調(疲れがとれない、だるい、気分が落ち込む)」 の原因は腎臓にあった。 ●60代の腎機能は何もしないと20代の半分にまで衰える。 ●「慢性腎臓病」はリンが原因の早老症だった。 ●45歳を過ぎたら、リンの多い食事 (加工食品、 赤身肉、マグロ赤身など)は避ける ●とんでもなく日持ちするものは食べない。 ●スナック菓子は個別包装のものを選んでリンの過剰摂取を防ぐ。 ●「下ゆで」、「ゆでこぼし」でリンを減らせる。 ●30分に1度席を立つだけで「骨粗しょう症」予防に。

前へ次へ
千冊回峰行中!
トーク情報
  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.733 
    『八日目の蝉』角田光代著
    (2007/3/25 中央公論新社)

    2024/05/14 
    (Amazon Audibleで3/19視聴)

    不倫相手の子供を衝動的に盗み出し、数年も連れ回す主人公に徐々に情が移っていくが、いつ捕まるのかと緊張感がずっと続いた。

    母親ごっごに付き合わされるが、決して不快ではない。子を守る母親として主人公の「希和子」になりきり、行く先々で世話してくれる他人の人情に触れ、逃亡生活をハラハラしながら追っかけて、最後は誘拐が発覚して捕まってしまい一旦ホットするも、今度は「薫」(子供)の目線でその後の第二章が始まる。希和子と同じような不倫をしてしまう薫に、またかといった諦めを感じる。

    希和子と薫の最後のすれ違いについても、やきもきしつつ諦めてしまう。
    そこで出会ったなら、お互いを十分に理解できただろうかな?

  • 吉田真悟
    吉田真悟

    No.734
    『キングスマン ファースト・エージェント』
    『キングスマン』
    『キングスマン ゴールデン・サークル』
    3作品、3/20に観覧終了(Amazon Prime Video)

    本気で作った紳士の国の映画だった。
    何度も観たが、痛快で面白い。金をかけているのがよくわかる。
    そして人が簡単に死ぬため罪悪感がない。そこが良い。

    「ファーストエージェント」
    1914年当時(どこまでが本当か私にはわからないが)
    凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公が、
    英国国王ジョージ5世の協力の下、高級テーラー内に国家権力から独立した諜報機関「Kingsman」を作る話。

    ・イギリス国王のジョージ5世、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世、ロシア皇帝のニコライ2世がいとこ同士だったとは知らなかった。
    ・「羊飼い」を名乗る謎の男が世界を混乱させるべく秘密会議を開いていたが、ロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイマタ・ハリ、ロシアの革命家レーニンといったそうそうたる歴史上の人物が登場する。後に世界を震撼させるキーパーソンたち。なのでなかなか、スケールの大きい時代がかったスパイアクション映画となっている。

    「キングスマン」
    キングスマンのメンバーの一人が冒頭で死んでしまい、その後任を危険な試験で選抜する。かつて自分の父がメンバーだったエグジーがもう一人の女性と選ばれるが、スマホを使い世界中を暴力的に洗脳する悪と戦うといった超アクション大作である。杖や傘などの独特の武器や防御アイテムが面白い。エグジーの成長と義理の父親との対決に鳥肌がたった。少年が一人前の大人にいきなりなってしまい、まぶしいのである。

    「ゴールデン・サークル」
    麻薬密売組織ゴールデン・サークルの女ボスとの闘いがメインのストーリィ。
    麻薬に仕込んだ毒物により世界中がパニックになるが、すんでところで解毒剤を手に入れて世界を救うというお話。
    米国諜報組織ステイツマンとキングスマンの関係(バーボンやテキーラって太陽に吠えろか?)が近いのか遠いのかいまいちわからなかった。親しい仲間の死がさらっとしていて心に沁みた。

    新作が出たら必ず観るよ。

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.735
    『変な家』 雨穴著(2021/07/22 飛鳥新社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ホラー・サスペンス。
    緻密にデザインされたディテールは凄いの一言。
    本当に怖くなり鳥肌が何度も立ったが、引き寄せられて先を読みたくなる。
    中毒性がある本である。夜に一人では読まない方が良いな。おしっこ漏らしそうだから、映画は観ない(^^)/

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.736
    『変な絵』 雨穴著
    (2022/10/20 双葉社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ばらばらの不気味な話がどう合体していくのか?
    結末を知りたいのだが、恐ろしいし、不気味だし、躊躇しながら先を読んでしまう。一体誰が主人公?犯人?被害者?いびつな絵の意味が分かってくると恐怖が何倍にも膨れ上がる。
    最終章でやっと最初の絵の意味が分かり、主人公が分かって全部つながった。
    どえれー怖かった。
    夏にぴったりの本。

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.737
    『吉原手引草』 
    松井今朝子著
    (2007/3/1 幻冬舎)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/23に視聴) 
    身請けが決まった遊女・葛城が、幸福の絶頂に突然失踪する。多くの人のインタビュー(3人称多視点)でその事実が明らかになっていく。
    どうも、仇討ちが隠れているし、人情噺でもある。
    よくある形式だが、書くのは大変であろうと思う。
    いきさつを忘れてこの文章を今、書いている。はぁ。

    第137回直木賞受賞作と聞いて気になって古本屋で買った。大変面白かった。

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.738
    『夜と霧』
    ヴィクトール・E・フランクル著(2002/11/06 みすず書房)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/24に視聴) 
    極限の恐怖でも生還することが分かっていたからなんとか読めたがきつい本だ。
    人間の尊厳やプライドが粉々になったとき、人は何をしだすのか?
    人類全体の負の貴重な体験記録である。子孫に語り継がなくてはならないと思った。
    今日石で追われた人達が明日は別の民を蹂躙する。
    今、ガザで起きていることはこの本とは全く関係ないと思おう。人類の進歩はいつまで止まったままだろう。共通の敵が現れない限り、その連鎖は繰り返すのだろうなぁ。愚かなり

  • 吉田真悟
    吉田真悟
    投稿画像

    No.739
    『読書という荒野』
    見城徹著
    (2020/04/03 幻冬舎文庫) 

    2024/07/02 (Amazon Audibleで3/25に視聴) 
    読んだはずなのに覚えていないことだらけで愕然とする。見城先生のお祖父様は森鴎外の友人で高名な医者だったそうだ。今更知る驚愕の事実。多分忘れただけなのだが。

    いったん読むと、とんでもなく読みたい本が増えてしまう。いや、前回もピックアップしたはずだが、怠慢である。『罪と罰』、『邪宗門』から読んでみるか。

    そうすると『仮面の告白』、『豊穣の海』、『金閣寺』などはいつになったら読めるのだろうかな。細かく読書計画を立てなくてはならないなぁ。早く読めよ自分!

    読書が荒野になる日まで精進しよう

The user agent does not support public key credentials.