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吉田真悟
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No.715 映画『月』 監督・脚本:石井裕也 企画・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸 撮影:鎌苅洋一 音楽:岩代太郎 制作・配給:スターサンズ、伊達百合、竹内力 原作:辺見庸『月』(角川文庫刊) <出演> 宮沢りえ (堂島洋子)
磯村勇斗 (さとくん) 長井恵里 (さとくんの恋人) 二階堂ふみ (坪内陽子)
オダギリジョー(堂島昌平)
大塚ヒロタ 、笠原秀幸 、板谷由夏 、モロ師岡 、鶴見辰吾 、原日出子 、高畑淳子 2023/12/17(12/15観映) ※最初に謝っておきます。ネタバレや書いちゃいけないことを書きます。読んで不愉快になる方もいるかと思います。ごめんなさい。 一昨日、大森で大問題作、映画[月]を席数70のこじんまりとした映画館で観た。20人弱入っていた客は全てシニア層で観終わった後は誰一人として口を開かず、下を向いて退出していた。皆が苦しみ悶え始めたのが分かった。 それから丸二日も経つのに私はまだ引き摺っている。犯され続けている。 「お前は死刑囚、植松聖(さとし)の考えや行動を全否定できるのか?」と喉元にナイフを突きつけられている。 戦後最悪の障害致死事件「相模原障害者施設殺傷事件」(通称:やまゆり園事件)の犯人植松聖(磯村勇斗演じる、さとくん)の言動・行動の豹変に寄り添ってしまう自分がいて驚く。心の無い障害者は生きる価値は無いとして19人を殺し、26人に重軽傷を負わせ、現在は東京拘置所で死刑執行を待つ身の彼にである。聾唖の恋人がいて、心を通わせることが出来なかった皮肉や偶然を見ながら切なくなってしまった。彼もまた重篤な障害者なのである。 映画は冒頭からサスペンス仕立てで、暗い救われないシーンや目を背けたくなる障害者の衝撃の映像が挟まれ、製作陣の並々ならぬ決意を感じた。特に磯村勇斗と宮沢りえ、二階堂ふみの覚悟と狂気の演技に圧倒された。ひとつ間違えば、非難され公開も危ぶまれただろうに。 ラストは件の殺戮のシーンで終えるのだろうと、たかを括っていたが、その想像を遥かに超えて、音の表現で恐怖に固まってしまった。殺される側では無くて殺す方に憑依していた。 しかしながら人を虫けらのように何百人も殺そうとする理由が見つからない。その狂気を生んだものは一体何だろうか? 生い立ち、社会、施設の同僚、虐待、暴行、恋人、大麻……。答えは死刑を待つ彼にも分かっていないのではないか?ごく普通の障害者に寄り添っていた青年が世間のために生きる価値の無い障害者はいらないと豹変する。第二、第三の彼が自分も含めた予備軍がまだ隠れている怖さがある。 一体、健常者と障害者を分ける線引きはどこだ? 人間らしい生き方、死に方とは? そういう重たいテーマをたくさん含む、観る方も自分の存在意義や生き方が問われる辛い映画である。 たったひとつ、宮沢りえ演じる堂島洋子夫妻の新しい命を迎え入れる覚悟が出来て、それぞれの存在を言葉で確認するシーンには素直に泣けた。生まれくる命と酷く消された命が相殺された後に少しだけ気持ちが楽になって安堵してしまうのである。 二度と観たくはないが、一生忘れることは出来ないだろう。やはり自分はずるい人間で業の塊だ。目を背けて生きてきたし、これからも無関心に見ないで生きるのだろう。知ってしまったさとくんの一生だけは見届けることになるだろうけれど……。やはり彼を全否定出来ない自分がいる。彼の中に自分がいる。そして哀れな醜い障害者の中にも自分がいる。鏡のような存在の月に追いかけられて笑われている様だ。いつまでこの不安定な気持ちが続くのかも分からない。 最後にこの映画を世に出した製作陣、賞を与えた報知映画賞の審査員達、紹介頂いた見城先生にお礼を申し上げたい。でも辛いっす。

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千冊回峰行中!
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  • 吉田真悟
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    No.733 
    『八日目の蝉』角田光代著
    (2007/3/25 中央公論新社)

    2024/05/14 
    (Amazon Audibleで3/19視聴)

    不倫相手の子供を衝動的に盗み出し、数年も連れ回す主人公に徐々に情が移っていくが、いつ捕まるのかと緊張感がずっと続いた。

    母親ごっごに付き合わされるが、決して不快ではない。子を守る母親として主人公の「希和子」になりきり、行く先々で世話してくれる他人の人情に触れ、逃亡生活をハラハラしながら追っかけて、最後は誘拐が発覚して捕まってしまい一旦ホットするも、今度は「薫」(子供)の目線でその後の第二章が始まる。希和子と同じような不倫をしてしまう薫に、またかといった諦めを感じる。

    希和子と薫の最後のすれ違いについても、やきもきしつつ諦めてしまう。
    そこで出会ったなら、お互いを十分に理解できただろうかな?

  • 吉田真悟
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    No.734
    『キングスマン ファースト・エージェント』
    『キングスマン』
    『キングスマン ゴールデン・サークル』
    3作品、3/20に観覧終了(Amazon Prime Video)

    本気で作った紳士の国の映画だった。
    何度も観たが、痛快で面白い。金をかけているのがよくわかる。
    そして人が簡単に死ぬため罪悪感がない。そこが良い。

    「ファーストエージェント」
    1914年当時(どこまでが本当か私にはわからないが)
    凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公が、
    英国国王ジョージ5世の協力の下、高級テーラー内に国家権力から独立した諜報機関「Kingsman」を作る話。

    ・イギリス国王のジョージ5世、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世、ロシア皇帝のニコライ2世がいとこ同士だったとは知らなかった。
    ・「羊飼い」を名乗る謎の男が世界を混乱させるべく秘密会議を開いていたが、ロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイマタ・ハリ、ロシアの革命家レーニンといったそうそうたる歴史上の人物が登場する。後に世界を震撼させるキーパーソンたち。なのでなかなか、スケールの大きい時代がかったスパイアクション映画となっている。

    「キングスマン」
    キングスマンのメンバーの一人が冒頭で死んでしまい、その後任を危険な試験で選抜する。かつて自分の父がメンバーだったエグジーがもう一人の女性と選ばれるが、スマホを使い世界中を暴力的に洗脳する悪と戦うといった超アクション大作である。杖や傘などの独特の武器や防御アイテムが面白い。エグジーの成長と義理の父親との対決に鳥肌がたった。少年が一人前の大人にいきなりなってしまい、まぶしいのである。

    「ゴールデン・サークル」
    麻薬密売組織ゴールデン・サークルの女ボスとの闘いがメインのストーリィ。
    麻薬に仕込んだ毒物により世界中がパニックになるが、すんでところで解毒剤を手に入れて世界を救うというお話。
    米国諜報組織ステイツマンとキングスマンの関係(バーボンやテキーラって太陽に吠えろか?)が近いのか遠いのかいまいちわからなかった。親しい仲間の死がさらっとしていて心に沁みた。

    新作が出たら必ず観るよ。

  • 吉田真悟
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    No.735
    『変な家』 雨穴著(2021/07/22 飛鳥新社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ホラー・サスペンス。
    緻密にデザインされたディテールは凄いの一言。
    本当に怖くなり鳥肌が何度も立ったが、引き寄せられて先を読みたくなる。
    中毒性がある本である。夜に一人では読まない方が良いな。おしっこ漏らしそうだから、映画は観ない(^^)/

  • 吉田真悟
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    No.736
    『変な絵』 雨穴著
    (2022/10/20 双葉社)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/22に視聴) 
    ばらばらの不気味な話がどう合体していくのか?
    結末を知りたいのだが、恐ろしいし、不気味だし、躊躇しながら先を読んでしまう。一体誰が主人公?犯人?被害者?いびつな絵の意味が分かってくると恐怖が何倍にも膨れ上がる。
    最終章でやっと最初の絵の意味が分かり、主人公が分かって全部つながった。
    どえれー怖かった。
    夏にぴったりの本。

  • 吉田真悟
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    No.737
    『吉原手引草』 
    松井今朝子著
    (2007/3/1 幻冬舎)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/23に視聴) 
    身請けが決まった遊女・葛城が、幸福の絶頂に突然失踪する。多くの人のインタビュー(3人称多視点)でその事実が明らかになっていく。
    どうも、仇討ちが隠れているし、人情噺でもある。
    よくある形式だが、書くのは大変であろうと思う。
    いきさつを忘れてこの文章を今、書いている。はぁ。

    第137回直木賞受賞作と聞いて気になって古本屋で買った。大変面白かった。

  • 吉田真悟
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    No.738
    『夜と霧』
    ヴィクトール・E・フランクル著(2002/11/06 みすず書房)

    2024/07/01 (Amazon Audibleで3/24に視聴) 
    極限の恐怖でも生還することが分かっていたからなんとか読めたがきつい本だ。
    人間の尊厳やプライドが粉々になったとき、人は何をしだすのか?
    人類全体の負の貴重な体験記録である。子孫に語り継がなくてはならないと思った。
    今日石で追われた人達が明日は別の民を蹂躙する。
    今、ガザで起きていることはこの本とは全く関係ないと思おう。人類の進歩はいつまで止まったままだろう。共通の敵が現れない限り、その連鎖は繰り返すのだろうなぁ。愚かなり

  • 吉田真悟
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    No.739
    『読書という荒野』
    見城徹著
    (2020/04/03 幻冬舎文庫) 

    2024/07/02 (Amazon Audibleで3/25に視聴) 
    読んだはずなのに覚えていないことだらけで愕然とする。見城先生のお祖父様は森鴎外の友人で高名な医者だったそうだ。今更知る驚愕の事実。多分忘れただけなのだが。

    いったん読むと、とんでもなく読みたい本が増えてしまう。いや、前回もピックアップしたはずだが、怠慢である。『罪と罰』、『邪宗門』から読んでみるか。

    そうすると『仮面の告白』、『豊穣の海』、『金閣寺』などはいつになったら読めるのだろうかな。細かく読書計画を立てなくてはならないなぁ。早く読めよ自分!

    読書が荒野になる日まで精進しよう