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さらさちこ

5回も見た相撲のドラマ 「サンクチュアリ 聖域」 稽古から撮影まで2年半。 主演一ノ瀬さんの身体の変化には目を見張る。 最初のシーンのテレビ放送や、壁の張り紙(特に猿谷と親方が病院に居るシーン)まで、伏線が引いてある。 ここに、4人の母が出て来る。この対比が興味深い。猿桜と静内の実母、あと二人は相撲部屋の女将さん。 猿桜と静内は、親が借金まみれで生活が困窮している点で境遇が似ているが、静内の母は弟と命を断ってしまうのだ。以来幸せな子供相撲を心の支えに生きる静内。一方、猿桜の母は、醜態晒しても何をやってでも生きて抜く。嫌悪感さえ抱くが、相撲をやめようとする猿桜を、体を張って張り倒した時に神々しささえ感じる不思議な役どころだ。直後の猿桜の慟哭は、力士猿桜の誕生であり産声でもある。昔教科書で習った I was born、まさに生まれさせられたのだ。 そこからのトレーニング、次第に心も身体も整い、礼節が身につく。そうして聖域に辿り着く。 入門当初は練習が、いじめのようなしごきに見えたが、生まれ変わってからは鍛錬にしか見えなくなる。 途中の猿谷の断髪式は、涙なしでは決して見れないし、「バカヤロー、おまえはこれからも、自慢の息子だ」という親方の言葉と、奥で見守る女将さんの着物に落ちる涙に涙腺崩壊する。 最後は、実生活でも、待ったなしの猿桜と静内の土俵シーン。仲間の有無や母の在り方の違いが、勝負にどう出るか、続きが見たくなる。 相撲好きには堪らない作品だ。

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  • さらさちこ
    さらさちこ

    「オッペンハイマー」

    多分もう一度は必ず観に行くだろう。
    私の生まれが広島で、被爆した者も身内に居る。しかし、最初から濁ったフィルターを通して、観るのだけはやめようと思っていた。
    嫉妬という字は、女偏を使うが、男の嫉妬ほど狂気じみたものはないと思っている。闘争心の根底に仄暗く流れているのだ。
    禁断の果実として、青林檎そしてジーンや原爆と、オッペンハイマーの心のゆらぎが細やかに描かれている。天才の孤独は満たされたい欲求へ繋がっている。
    結局、原爆は神の領域を超えることのない、禁断の林檎のような試金石であったのだ。
    楽園から追放され、茨の道を歩くという事を、人間は繰り返しているに過ぎない。
    全能感を持って成しても、人間の欲望を抑える事は出来ないのだ。それに気付きオッペンハイマーは失望したと思う。
    3時間という長丁場だが、寧ろ短いとさえ思えた。
    IMAXでないと、価値が半減するので、劇場で観るべき作品。

  • さらさちこ
    さらさちこ

    『暗殺』柴田哲孝
    安倍総理に付けられた田布施と言う名を見て、明治天皇すり替え説などの陰謀論が思い浮かび、更に宗教との結び付きなど、設定に抵抗がありました。
    しかし、どうしてもジリジリと読みすすめてしまうのです。

    新聞社が申し合わせたように同じ見出しの記事だったことや、90メートル離れた立体駐車場の壁に当たりながら他には一人も怪我人が出なかったこと、弾が見つからないなど、不思議な事が多すぎる暗殺事件です。
    この度のトランプ氏の暗殺未遂と比べると、その疑問がより鮮明に湧き上がる。

    そうした疑問のパズルのピースが、カチッと音立ててを合わさってゆく。
    辻褄を合わせながら。

    真っ暗闇に、過去から現在に向けて、一筋の光がサッと差すように。
    それは、冒頭の総理の設定から、全てが、陰謀論の入れ子式になっていて、パズルが音を立てる度に、陰謀論では片付けられない確信となって、引き込まれてゆくからです。

    最後の一行まで目が離せない。シャドウは陰に身を潜め、誰もが持つ影。これからも、誰にも起こり得る事であり、思想のような生き物となって時代を超えて、存在し続けるように思えてならない。

  • さらさちこ
    さらさちこ

    『三流シェフ』

    読了後の余韻に浸る。
    生まれや育ち身に降りかかる不遇、変えられないこと。極寒の黒く深い海に揉まれながら、一筋の光明を見出だされた。
    最近親ガチャと言う言葉が踊っていたが、三流シェフを読んで、どんな人生にも賭け処が用意されているのだと思う。好機を逃さぬよう研ぎ澄まして、それでいて泰然自若であること。自分が人生の主と自覚して、責任を負って生きる覚悟があれば、自分も変わり世界が変わる。
    自分を諦めた人に励ましになる本だと思う。若い方から年配の方まで手にして欲しい本です。
    そして三國さんを、三國さんに限らず沢山の方を、ずっとずっと変わらず側で見届けて来られた見城さん。いっぱいいっぱい泣いたり、時に喜んだり
    されて来られたたのでしょう。
    思いが詰まった深く重い一冊です。

  • さらさちこ
    さらさちこ

    「ルックバック」

    背中から始り、背中を追い、背中で終わる。また、背景、後ろを振り向く、過去を振り返るなど、これほど含みのあるアニメは見たことがない。手を繋ぎ歩き出すシーンでは、最高の楽しさや幸せを覚える時に、必ず付きまとう不安や憂鬱が上手く表現されていた。
    京アニの事が重なり許し難く堪らない気持ちになりつつも、アニメの可能性や想像の世界の癒しの素晴らしさを再認識した。しかしながら、否応なしに現実を生きる事に引き戻される。
    藤野は、京本の圧倒的努力を目の当たりにし、それが開花することへの恐れから、進学に水を差すのだが、立ち直れないような事から藤野を救ったのはアニメであり藤野自身の圧倒的努力でもあったと思う。
    アニメ界の嫉妬や葛藤、作者(発想)とアシスタント背景(実現)は切ってもきりはなせない表裏一体であって、「ルックバック」は背景へのリスペクトでもあることを感じ取れた。原作者藤本氏の告白のようでもある。
    ラストの藤野の背中、夕暮れから夜に変わってゆく背景は京本が描き続けているようだ。
    映画評論家松崎建夫氏の指摘通り、最初と最後のシーンでは、あの歌が確かに隠されていました。
    Don't look back in anger.
    https://youtu.be/3npERSYvhtU?feature=shared