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  1. 七色息子

    東京国際映画祭で「スヴェタ」を観てきた。

    ろうあの主人公スヴェタは、二児の母。同じくろうあの夫ともにアパートで4人暮らし。共働きでなんとか生活を維持していたものの、世の不況の波には逆らえず、ローンを滞納しがちで、ついに立ち退きを言い渡されてしまう。さらに、追い討ちをかけるように、勤め先ではリストラを宣告され、彼女は窮地に追い込まれる。頼りない夫にイライラしながらも、それでも、子供達だけはどんなことをしてでも自分の手で守っていきたいと強く思う彼女は、予想もつかないとんでもない行動に出る。そんな映画。

    善悪やら、良心やらは、生活に余裕のある人間の戯言に過ぎない。そんなことグダグダ言っていたら子供たちは本当に地獄(養護施設)に連れて行かれてしまうのだ。

    いやしかし、スヴェタの行動や言動は本当に強かで、観客も苦笑いしていた(笑)肝っ玉母ちゃん、なんて可愛らしい言葉では言い表せないくらい、悪い意味で「したたか」な女性だな、と思った。彼女には良心の呵責の欠片すらないのかと、頭を抱えながら観た。

    でも、そんなスヴェタがとてもリアルだったのも確かで。実際…厳しいもんな…、と彼女がした事を受け入れざるを得ない自分もいた。これが、この作品が切り取った現実という力だと思った。自分はどうしても、彼女を心から非難することができなかったのだ。

    ときに、音楽というのは、脚本や役者の演技と同様に、映画にとっては必要不可欠なものだ。観客は、役者のセリフや演技よりも、決定的なシーンで流れる音楽によって心を震わせることが多々ある。音楽がないと成立しない映画なんて山ほどある。

    しかし、この作品には音楽が一切流れない。

    主人公は声を発することができない。スヴェタたちは、全編にわたり手話で会話をしている。そう、音楽を流しても彼女達には聞こえないのだ。そんな彼女たちの心を音楽で表現しようとするなんてナンセンスでしょ?そんな監督の意志が伝わってくるような気がした。

    で、その代わりなのかは分からないが、この映画は、カメラ長回しのシーンが非常に多かった。スヴェタの行動を淡々と写すシーンがほんとに多い。セリフがあるわけでもなく、何かが起こるわけでもなく、我々の想像を手助けしてくれる音楽もなく、スクリーンは、ただずっとスヴェタを映していた。

    そんな実験的な作品でもあったが、自分は主人公の判断をどうしても理解することができなくて とても居心地が悪かった。この居心地の悪さこそ、自分が偽善者だという何よりの証拠なのではないか、という思いに囚われ、なかなか手厳しい映画体験でした。

    ラストシーン、スヴェタの言葉が、この作品を力強く包む。半ば強引とも思える最後だったが、この作品を締めるには最も相応しいであろうベストなセリフで、こりゃ凄ぇな!と膝を打った。いやはや、世界に凄い映画が沢山あるなあ。ほんと力強い作品でした!ブラボー!

    ‪【スヴェタ】 #東京国際映画祭 #TIFFJP #eiga http://2017.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=27