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三上雅博のトーク
トーク情報三上雅博 見城徹見城徹 32歳の夏の丁度今頃。当時の恋人とのドイツ旅行は鮮やかに記憶に残っている。1ヶ月の休暇を取ってベルリン夏季大学の美術の講座を受講していた彼女と西ベルリンで落ち会って、8日間のドイツ国内の田舎を鉄道で巡る旅に出たのだ。ドイツの小さな町々は時間が止まったように中世の面影を残して佇んでいた。家族経営のホテルに泊まり、歴史的遺跡を辿り、ホフブロイハウスで他の客と肩を組んでビールを飲んだ。陽はなかなか落ちず一日が長かった。
彼女はドイツ語が堪能で全てが快適だった。
西ベルリンで買ったジョルジオ・アルマーニの革のブルゾン。馬車に乗って訪ねた霧のノイシュヴァンシュタイン城。異世界に酔い痴れた移動サーカスのテント……。あの夏は二度と戻って来ない。三上雅博 見城徹見城徹 この季節になると[京味]の「鱧鍋」を食べたくなる。9月の下旬から10月の初旬。鱧が消える頃、松茸が出始める。淡路島の鱧と丹波の松茸。京都ではこの2つが重なる日は10日ぐらいしかない、と[京味]の西健一郎大将は言う。8月末になるとその10日間のどの日にするか?と西健一郎大将から電話が入る。2階の個室をキープするのだ。そうやって45年間毎年[京味]で鱧鍋を食べて来た。鍋の前の料理も全て鱧と松茸。僕は鱧も松茸もそんなに好きではないのだが、1年に1回は[京味]で「鱧鍋」を食べて来た。それを夏が終わり秋が来る通過儀式としていたのだ。2年前からそれは無い。大将は亡くなり、「自分がカウンターにいない店は『京味』ではない」と言う生前の言葉通りに[京味]は閉店した。8月が終わりに近付くと西健一郎大将の電話の声を思い出す。