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藪 医師(中山祐次郎)

2015年の夏。麻布十番のあるお店で、見城さんとある方々2人と4人で食事をしていた。そこでおそるおそる言った言葉。 「見城さん、小説を書きたいです」 それから何度かの大きな失敗と挫折を経て、2018年に小説「泣くな研修医」を出して頂いた。翌年には文庫で続編出版、そしてドラマ化。あれよあれよと重版頂き、なんとシリーズ30万部を突破した。 あらゆる人からドラマ化を祝福され、どこへ行っても「ドラマ化するの?すごい!」と言われるように。患者さんのことで相談した医師からも、病院の食堂の話したことなかった人からも。印税も、びっくりするくらいたくさん頂戴した。びっくりするくらい税金に取られたけど。 さて、僕は満足したのだろうか。外科医をやりながら研究をし、残りの時間で家事育児、そのさらに残りの時間で執筆。 こんな、悲痛な日をいつまで送るのだろうか。作家一本で、あるいは外科医一本でやればどれほど平和な日なんだろう。 でも、どうしても我慢ならない。医者業も辞められないし、家事育児はやり遂げ家庭運営も成功したい。研究だって、目覚ましい結果を出して見せる。その上で、何者にも書けない文章を重ねて、あっと驚くような小説を書きたい。 贅沢な悩みだと見城さんには言われた。それでも、全部やっていく。絶望しきって死ぬために。いつ死んでも後悔するように。

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