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藪 医師(中山祐次郎)

この6年間、何千回も何万回も逃げ出そうとした。そのたびに、「人が休んでいるときに歯を食いしばらねば、鮮やかな結果など出ない」とひとりごちた。何度も原稿をボツにする編集者小木田さんを恨んだ。すべては力量のなさと、天才でない自分を呪った。 自分にしか出来ないことはなんだろう。そんなものはない、いやある、と苦しい往復をした。毎日メスを持ち、人の死に歯ぎしりをしながら書く、それしかないと信じた。 まだ満足などしない。できようもない。僕はまだまだ「やる」を選び続ける。駄作を書いたら一発退場の、このリングの上で。

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