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見城徹

「ちひさな群への挨拶」 吉本隆明 ぼくはでてゆく 冬の圧力の真むかうへ ひとりつきりで耐えられないから たくさんのひとと手をつなぐといふのは嘘だから ひとりつきりで抗争できないから たくさんのひとと手をつなぐといふのは卑怯だから ぼくはでてゆく すべての時刻がむかうかはに加担しても ぼくたちがしはらつたものを ずつと以前のぶんまでとりかへすために すでにいらんくなつたものはそれを思ひしらせるために ちひさなやさしい群よ みんなは思ひ出のひとつひとつだ ぼくはでてゆく 嫌悪のひとつひとつに出遇ふために ぼくはでてゆく 無数の敵のだまん中へ ぼくはつかれてゐる がぼくの瞋りは無尽蔵だ ぼくの孤独はほとんど極限に耐えられる ぼくの肉体はほとんど苛酷に耐えられる ぼくがたふれたらひとつの直接性がたふれる もたれあふことをきらつた反抗がたふれる ぼくがたふれたら同胞はぼくの屍体を 湿つた忍従の穴へ埋めるにきまつてゐる ぼくがたふれたら収奪者は勢ひをもりかへす だから ちひさなやさしい群よ みんなのひとつひとつの貌よ さやうなら

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